希薄化する「財政再建」に漂う2020年後の不安 2018年度予算から予測する日本の未来
税収の伸びに対する概算も大きく外しており、見通しの甘さが目立つ。とても、世界一の財政赤字を抱える国の政権とは思えない。
団塊世代が75歳になる時は150兆円のコストがかかる?
今回の2018年度予算は、簡単に言えばこれまでとそう大きな変化はない。財政再建という言葉は、つねに目立つところに掲げてはいるものの、本気でやろうという意思を感じるのが難しい。
昔から言われていることだが、一度ついてしまった予算を「ゼロ」にするのは、日本政府の場合は大変困難なようだ。たとえば、ほぼ実現するメドが立っていないと言われる「フリーゲージトレイン(軌道可変電車、新幹線と在来線の軌道を自由に選択できる電車のこと)」の開発費として、2018年度も約9億円をつけている。JR九州が採用を拒否していることから、少なくとも日本国内で実用化されるメドは立たなくなった。
耐雪、耐寒化に関する技術開発など耐久性の技術開発を同時に行う、としているが一度得た既得権を断ち切るだけの決断力が日本の行政にはないのかもしれない。
その一方で、2018年度予算の中でも政府が自画自賛しているのが社会保障費の伸びを5000億円に抑えたことだ。10年前の2008年の一般会計歳出の社会保障給付費は約22兆円。2018年度には33兆円に達している。この10年で1.5倍に伸びたことになる。2018年度も自然に増加する社会保障費6300億円を負担する必要があったのだが、それを5000億円に抑えた、というわけだ。
ところが、その中身をよく見ると圧縮できた分は、ほぼすべてが「薬価の引き下げ」によるものだ。薬価改定によって削減できた国費は1456億円。もともと2018年度は、診療報酬と介護報酬を6年ぶりに同時に改定する時期に当たっている。言い換えれば、今後も爆発的に増加することが予想されている社会保障費に、抜本的な改革を断行するチャンスだったわけだ。
にもかかわらず、薬価の引き下げだけで社会保障費抑制という課題を乗り切ってしまった。医師会と自民党という政治の力が働いたのではないかとも言われているが、こうした場当たり的な予算編成を、日本政府は延々と続けている。
こうした事態を繰り返していたら、どんなことになるのか。たとえば、2025年には「団塊世代」が全員75歳の「後期高齢者」になる。現在(2015年度)の社会保障給付費の合計は約115兆円だが、2025年度には150兆円になると予想されている。いわゆる「収入」に当たる健康保険料や介護保険料は、2025年度までに大きく伸びるはずはないから、不足する分は結局、国の財政に依存することになる。
しかも、2025年度といえばあと7年後だ。遠い未来の話ではない。早急に、準備をする必要がある。にもかかわらず安倍政権は、税金で景気を刺激して景気を良くし、税収入を増やすことで解決できる、といまだに本気で考えているようだ。
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