希薄化する「財政再建」に漂う2020年後の不安 2018年度予算から予測する日本の未来

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➁生産性革命

いわゆる人手不足や進まない賃上げに対応した政策だが、持続的な賃金上昇とデフレからの脱却につなげることを目指す「生産性向上」のための政策として「税制上の措置」や「設備・人材への投資の促進」「研究開発支援」「インフラ整備」など、生産性向上のための予算を組んでいる。正直言って、こんなことをするより以前に、官庁のペーパーレス化やデジタル化を推進したほうが、よほど民間ビジネスの生産性向上につながるし、国民も無駄な労力を使わずに済む。

フィンテックやAI(人工知能)を官庁が率先して推進させる、そんな発想が残念ながら日本政府にはないようだ。

③財政健全化

2018年度予算では、一般会計のプライマリーバランス(以下PB)も改善していると主張している。プライマリーバランスというのは「基礎的財政収支」のことで、歳入総額から国債などの借金による収入を差し引いた金額と、歳出総額から国債費等を差し引いた金額の収支を見たもので、簡単に言えば国債の償還や借り換えのための借金を除き、新しい借金をしないで財政運営ができればPBの黒字化となる。

当初は2020年までにPBの黒字化を実現させると公約していたものの、2022年にまで延長されている。2017年度のPBはマイナス10.8兆円、2018年度はマイナス10.4兆円とわずかに改善している。とはいえ、公債依存度は2018年度で34.5%程度(2017年度は当初35.3%)。しかも、日銀が国の借金(国債発行残高)の4割を負担している状況は、財政再建が進んでいるとは到底言えない。

財務省を敵視しているリフレ派の中には、このPB黒字化の制限こそが日本のデフレ脱却を妨げている、と主張する人もいるが、無制限な財政歳出がどんな結果をもたらすのかを説明しないで、一方的な財政歳出拡大論を推し進めるのも無理がある。

見通しの甘さが目立つ

財政削減といえば、民主党政権時代の「事業仕分け」を連想する人も多いだろう。安倍政権になってからも、2014年度の予算編成から省庁の壁を除外した「行政事業レビュー」として継続しており、非効率な事業や民間に委託するほうがベターなものについては、公開の場でヒヤリングを実施して、無駄な予算を廃止する仕組みを作っている。

ところが、2018年度予算案でカットできた無駄は993億円にとどまっており、2014年度以降最低の水準となった。やはり、自民党政権では財政再建はできないということかもしれない。

実際、この3月29日に開催された「経済財政諮問会議」でも、安倍政権の下で進めてきた「経済・財政一体改革」の中間報告が行われたが、2018年度予算の段階でPBが2015年度に想定したものよりも、6兆9000億円程度悪化することが報告された。

一般会計の赤字幅は3兆9000億円ほど縮小したものの、税収の伸び悩みで4兆3000億円、消費税増税の延期で4兆1000億円、補正予算の拡大で2兆5000億円の拡大となった。「赤字幅が減少したならいいじゃないか」と思われがちだが、補正予算の拡大を差し引くと1兆4000億円しか減らしていない。

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