項目別にみると、「安全保障(National Security)」「貿易政策(Trade Policy)」は、2016年の大統領選でトランプ氏が勝利した際に跳ね上がったものの、現在はさほど高くない。これらは、トランプ政権の対外政策の影響をダイレクトに受ける日本や韓国をはじめとするアジア圏ではこのところ非常に不安視されているが、どうやら米国内の様子はやや異なっているようだ。国際政治や貿易問題は、米国内でもいわゆる「上位層(Establishment)」といわれるようなメディアではそれなりに取り上げられるものの、北朝鮮問題や保護貿易は国民の日々の生活意識には直結しておらず、関心は海外に比べて低いのかもしれない。
第3に、日本のEPU指数は2月に若干上昇したが、水準としては欧米に比較すると圧倒的に低い。内訳をみると、「貿易政策(Trade Policy)」と「金融政策(Monetary Policy)」が2月以降上昇したが、足元の水準(84.49)は、欧米に比べても、2010年以降の平均値である113.86に比べて低く、不安が高まって円が急騰するような環境ではないといえよう。
トランプ政権の保護主義の強まりや、排外的な発言、北朝鮮との急接近などは、今年11月に予定されている中間選挙対策にほかならない。したがって、どこかに落ち着きどころはあるものの、中間選挙まではしばしばこうした「政治的不透明感」が高まる局面があるだろう。
不透明感は後退し、ドル円は緩やかに上昇へ
ただ、EPU指数を見る限り、米国民のこれらへの関心はさほど高くない。むしろ、昨年末に税制改革法案が可決したこと、トランプ政権がインフラ投資にも前向きな姿勢を見せていること、米連邦準備理事会(FRB)が「利上げは緩やかなペース」を目指していることによって、米国民にとってはトランプ政権の政策は安定してきたと映っているのかもしれない。したがって、よほど米中が全面的な貿易戦争に陥らない限り、これらの国際政治要因が現状の良好な米国経済や投資家・消費者のセンチメントを直撃する事態にはなりにくいだろう。
米国の対中制裁課税品目が公表されるなど、政策内容や今後の見通しが明らかになるにしたがって不透明感は徐々に後退し、金融市場も落ち着きを取り戻せば、ドル円は緩やかに上昇するとみている。
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