政治的不透明感がドル円相場を動かすのか EPU指数は意外にも足元で上昇していない

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EPU(=Economic Policy Uncertainty)指数は、「政治不透明感指数」あるいは「経済政策不確実性指数」などと訳されているが、米スタンフォード大学の教授らが開発した指数で、政治や経済政策の不透明感を示す。具体的には、経済政策の不確実性に関する新聞記事の数、将来に控える税制の変更による金額的影響度、エコノミストによる経済予想のバラツキ度合いの3項目から構成される。

たとえば米国の指数であれば、全米1800もの新聞から経済、不確実性、立法、赤字、規制、議会、連邦準備、ホワイトハウスなどのキーワードでスクリーニングをかけたうえで、「経済」と「不確実性」と「政策」のキーワードが含まれる記事を抽出し、算出している。このように、EPUの算出方法は非常にシンプルだが、新聞に多く取り扱われ、指数が上昇するということは、それに対して世間が不透明感を抱き、不安を感じていることを示している。

EPUを見る限り円が急騰する局面にない

日米欧のEPU指数と円の名目実効為替レートを重ねると、興味深いことがわかる。

第1に、米、欧、どちらのEPU指数が上昇するときでも、日本のEPU指数も上昇し、同時に円も上昇している。日本は海外の政策に影響を受けやすいことに加え、海外の政治不透明感が増して市場がリスク回避に傾けば、円が上昇しやすいことが見て取れる。

第2に、トランプ大統領の政策がこれまで数々の議論を巻き起こし、グローバル市場の不透明感を高めてきたにも関わらず、足元の米国のEPUは過去に比べても低水準で推移している。米国の新聞記事に多く取り扱われる問題は、税制改革やインフラ投資といった「財政政策(Fiscal Policy)」や、それをめぐる議会の動き、金融政策など、国民の生活に直結するものが多いということなのかもしれない。

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