「ひょっこりはん」が圧倒的な支持を得た理由 「子供向け」など売れる要素が詰まっている

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ネタの冒頭で、ひょっこりはんは舞台に姿を現しません。本人の声で「さあ、みんなでひょっこりはんを呼んでみよう」というアナウンスが流れて、それに合わせて観客がひょっこりはんの名前を呼ぶと、舞台袖から彼が顔を覗かせるのです。彼は観客を「みんな」と呼んでネタを進めていきます。

ひょっこりはんは意識的に子供番組のフォーマットを取り入れています。子供をターゲットにしているような設定で見る人のハードルを下げるというのも彼の戦略でしょう。昨年後半に大流行したにゃんこスターの縄跳びネタもこの形式です。子供番組の「うたのおにいさん・おねえさん」のような格好をした2人が、あえて幼稚な設定のネタを演じていました。

「子供が真似したくなるネタは流行る」というのはお笑い界の定説ですが、最近ではそれを見越して、初めから子供ウケを狙って意図的にそういう形のネタを作るというのも有効な戦略になりつつあるのです。

もともとは正統派の芸人だった

ひょっこりはんの面白さの秘密は、本人の素顔が見えないというところにもあります。彼自身はもともとコンビで漫才をやっていたこともある正統派の芸人だったのですが、その時期のことはあまり知られていません。だから、「おもしろ荘」に彼が出たとき、正体不明の謎の人物が新しいキャラクターを演じていること自体にインパクトがありました。

CMやドラマにも出演してすっかり売れっ子になった今でも、彼はバラエティ番組などで素のキャラクターをあまり見せていないように思います。その点についても、ひょっこりはんというキャラクターに「謎」を残しておきたいという意図があるのではないかと考えられます。

ただ、現代のバラエティ番組では、長く出ているといずれ素のキャラクターを見せることを求められがちです。隠されている素顔が明かされて、謎が消えてしまったら、そのときにはひょっこりはんにかかっていた魔法も解けてしまうかもしれません。突如湧き上がったこの「ひょっこりはんブーム」がどこまで続くのか、ここからが本当の勝負になりそうです。

ラリー遠田 作家・ライター、お笑い評論家

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らりーとおだ / Larry Tooda

主にお笑いに関する評論、執筆、インタビュー取材、コメント提供、講演、イベント企画・出演などを手がける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)など著書多数。

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