貨物列車の「自動運転」実現は物流を変えるか トラックより実用化は早い?欧州で試験運転
その後はさらに一歩進んで、運転席もない完全自動運転を実現した鉄道が誕生した。世界で初めて完全自動運転による営業運転を行ったのは、1981年に誕生した神戸の「ポートライナー」だ。ゴムタイヤを使用した小型の車両がドア開閉や発進・停止までを完全自動で運行するもので「新交通システム」と呼ばれ、日本ではその後東京や広島など各地で採用された。それ以降、全自動運転の鉄道は主に地下鉄など都市交通を中心に、世界各地に広まっている。
一方、完全自動運転といえばゴムタイヤ車両による新交通システムである日本と異なり、海外では通常の鉄車輪を採用した鉄道で完全自動運転を実現している例も多い。
1987年に誕生した、英国ロンドンのドックランズ・ライトレイルウェイ(DLR)は、通常の鉄車輪を使ったシステムで、検札や安全確認を行うための乗務員は添乗しているが、基本的にはドア開閉から発進・停止まで、完全自動運転を実現している。コペンハーゲンやミラノの地下鉄などで採用されている、旧アンサルドブレダ(現日立レールイタリア)が開発したシステムも、ドライバーレス(運転士なし)の完全自動運転を実現している。
一般の鉄道でも実用化なるか
だが、これらは新設された地下鉄など、基本的にほかとは隔離された路線での実用化だ。多数の路線と混じり合い、複雑なネットワークで運行されている従来からの一般鉄道システムでの自動運転は、現実的には安全上、まだ多くの課題を抱えている。
そんな中、オランダで予定されている貨物列車での試験は、一般の鉄道における自動運転の実用化に向けた動きの一つといえる。
自動運転の試験が行われるBetuweルートは、ロッテルダム南郊Kijfhoek(カイフフック)から、ドイツ国境に近いアーネムの郊外Zevenaar(ゼーフェナール)との間を結ぶ全長113kmの貨物専用線。欧州交通ネットワークTEN-T計画の一環として建設され、ドイツや近隣諸国からの貨物を欧州最大のロッテルダム港へ輸送するための重要な幹線として2007年に完成した。線路は完全に立体交差化され、曲線や勾配を抑えた設計となっている。
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