貨物列車の「自動運転」実現は物流を変えるか トラックより実用化は早い?欧州で試験運転

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アルストムの全自動運転システムを採用した、パリ地下鉄14号線(筆者撮影)

今回の走行試験に向けては、アルストム社の技術が採用されている。システムとしては、パリ交通公団の地下鉄などで実績のある自動運転技術を貨物運転用に最適化し、すでに同路線に設置されている欧州標準信号システムETCS Level2(European Train Control System)との組み合わせで、前方列車との間隔や走行速度などを細かく自動制御する仕組みだ。ただし、緊急時の対応のため、完全な無人運転ではなく保安要員としての乗務員が添乗する。

Betuweルートは1時間に片方向最大8本の列車を運転できるキャパシティを持つが、接続するドイツ側の線路改良が完了していないため、現時点ではまだ最大本数での運転は行われていない。しかし、自動運転が実用化されれば、この最大本数よりさらに列車間隔を詰めることも可能となり、より多くの列車を安全に運行することが可能となる。

貨物列車自動化は早期に進むか

複雑に入り組んだターミナル駅周辺の線路。一般鉄道における自動運転技術の普及には、まだ課題も多い(筆者撮影)

日本の新幹線とは異なり、主要都市のターミナル駅付近では在来線を走行する欧州の高速列車は、現時点ではこうした自動運転技術をそのまま転用することは難しい。しかし、ヤード間のみを走行する貨物列車であれば、完全に隔離された専用線だけを走行することが可能となるため、自動運転技術の実用化は早いものと考えられる。

欧州には今回の走行試験を実施するBetuweルートを筆頭に、長大な貨物専用線がいくつか存在しており、システムが実用化されれば将来的には他路線への導入も考えられる。もちろん安全上、完全な無人化は難しいが、自動運転技術の導入によって運転間隔の短縮などが実現すれば輸送力が増強され、運用の大幅な効率化や輸送のコストダウンも図られることになるだろう。自動車よりも実用化で先行するであろう貨物列車の自動運転化は、ほかの輸送手段を含めた物流全体にさまざまな影響を及ぼすのではないだろうか。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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