出所した若者を更生教育する46歳社長の信念

「再犯防止で大阪を日本一安全安心な街に」

「良心塾」を始めて2年半。延べ20人を受け入れ、12人が巣立っていきました。再犯者はそのうちわずか1人で、努力が報われた感がありますが、一方で無事卒業した人は3人。残りの8人は、退塾(6人)と行方不明(2人)です。まだまだ更生への道は険しいと言わざるをえません。

そんな中、社会復帰を目指す若者たちのため、黒川さんは新しいチャレンジを始めています。

反省は1人でもできるが更生は1人ではできない

「服役者の再起のためには『就労支援』『宿泊支援』『教育支援』が必要ですが、それを慈善事業でなく、持続的なビジネスとしなくてはいけません」と黒川社長は言います。

黒川社長(筆者撮影)

そのため、産業廃棄物運搬業の認可を取り、2トントラックで廃棄物運搬の仕事を始めました。さらに、大阪府下の産業廃棄物処理会社「東栄大和クリーンセンター」と合併し、中間処理場も含めた総合的な産廃処理事業にも乗り出しています。強固な経営基盤構築の一環です。

もうひとつの試みが、クラウドファンディングによる「再チャレンジ実践道場美容室」の設立です。その費用をクラウドファンディングで集めることに挑戦しました。

少年院出院者が経済的に自立し人間性を磨くための「実践自立支援美容室」の改装費として120万円、彼らが美容師資格を取得するための美容学校1年分の学費60万円(@30万円×2人)、併せて180万円を当初の目標額にしました。今年の3月15日に募集を開始したところ、なんとわずか46時間で目標を達成。申し込んでくれた方の熱意に大いに励まされました。ただこのプロジェクトはまだまだ始まったばかり。美容室の2階にコミュニティカフェを作るのに180万円、「良心塾」のWebサイトを作るのにさらに180万円が必要です。4月26日締め切りで引き続き支援金を集めています。

こうした動きはマスメディアも注目しているところですが、2017年12月14日には現職の法務大臣・上川陽子氏も関心を持ち、同社を訪問しています。チャリティではなく持続的なビジネスとして再犯問題解決に取り組んでいる同社の姿勢は、再犯防止推進計画を進めている政府にとって、大きな期待を抱かせるロールモデルと言えます。

受刑者が更生して働けば人材不足の解消になり、また再犯者が減れば刑務所費用の削減にもつながります。再犯防止で大阪を日本一安全安心な街にすれば、国際博覧会誘致に一役買うこともできるでしょう。

最後に印象深かった黒川社長の言葉を掲げておきたいと思います。

「考え方、生き方を本気で変えようと思わなければ、更生はできません。自分もやんちゃしてきたからよくわかるんです。でもそんな息子を、母は見捨てないでいてくれました。残りの人生を、母に『頑張ったね』と言われるような生き方をしようと心掛けています。反省は1人でもできますが、更生は1人ではできません。幼少期から親や社会から愛情をもらえなかった若者に、私たち大人が、関心を持って手を差し伸べてあげてほしいと思います」

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