家賃保証を疑わない人が嵌る不動産投資の罠 大金をつぎ込んで起業することと同じだ

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サブリースは本来AさんBさんともにメリットのある取引になるはずだが、かぼちゃの馬車を投資家に提供していたスマートデイズは保証した家賃を支払わなくなった。投資家の多くは会社員ということなので、シェアハウス建築のための借入金を給料だけで返済することは困難だろう。

支払い停止になった理由は入居率が低かったことが直接的な原因だという。結局は「女性専用のシェアハウスにどれくらいニーズがあったのか?」「ニーズがあったとしても価格や場所に問題はなかったのか?」ということになる。

家賃保証は保険会社でも提供できない?

かぼちゃの馬車で被害者となった投資家には申し訳ないが、今回のトラブルは「家賃保証」を過剰に信用しすぎたとしか言えない状況だ。

その判断に対するリスクを避けるために家賃保証があったはずなのに……と投資家は考えていたと思うが、家賃を保証することは賃貸経営において空室リスクを保証することであり、「リスクの保証」は保険会社が販売する生命保険や医療保険と仕組みとしてはまったく同じだ。

保険会社は保険を販売するにあたって、金融庁から極めて厳しい管理を受けている。金融機関としての格付けや支払い余力(ソルベンシー・マージン比率)も公表され、アクチュアリー(保険数理人)という弁護士よりも取得が難しいと言われる高難度の資格保有者によって妥当な保険の販売価格が決められている。

生命保険であれば、「○歳の日本人男性が1年以内に死亡する確率は△%、だから契約者に□万円の保険金を払うには保険料は×円くらいが妥当」、といった具合に過去のデータから統計的に計算が可能だが、空室リスクにそのような値付けは果たして可能なのか。

不動産は物件ごとに性質が異なり、女性専用のシェアハウスの需要となれば過去のデータ蓄積が少ない分さらに予測が難しい。その空室リスクを保証するとなればいったいどれぐらいの保証料が妥当なのか、つまり生命保険でいう保険料をいくら取ればいいのか。アクチュアリーですらまともに計算できないのではないか。

そして家賃保証を提供する不動産会社の財務的な基盤は、保険会社並みに厳しく規制されるべきだが、そのような状況にはまったくなっていない。

スマートデイズに限らず、結局はいち不動産事業者に「家賃保証」を提供できると考えるほうが間違っていたということになる。家賃保証という言葉を避けて、一括借り上げやサブリースと表現するにとどめている会社もあるが、大手不動産会社でもいまだに家賃保証と表記している会社も珍しくない。これは証券会社の営業マンが「絶対に儲かります」と説明して株を売っているくらい危険に見える。

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