レール異常放置したJR北海道の病弊 経営体制の抜本的見直しや企業風土改革が急務だ。

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一貫性を欠く会社の説明

一連のトラブルで露見したのが、JR北海道が社内の情報すら正確に把握できず、当事者能力を失っていることだ。24日夕方の会見では、その時点で判明していた97カ所のレール異常のほかに「新たな異常箇所はない」としていたが、25日未明に一転、新たに約170カ所で同様の問題があったことを発表した。

脱線した貨物列車の様子(運輸安全委員会提供)

当初、本線のレール異常箇所は「各保線区と本社がダブルチェックして問題はない」(同社)としていたが、後にそうした体制にないことが判明。野島誠社長は会見で「担当者間の連携がうまくいかなかった」「作業を失念した」と繰り返した。また、一部に残る旧国鉄時代の旧基準のレールと現行基準のレールで、広がりが許される「許容値」が異なることを知らない現場担当者がいたことも明らかになった。

現場に対しては、安全運行に欠かせない重要情報の周知が不十分で、逆に日々の点検で生じた異常が上層部まで報告されず、いつしかうやむやになる。多くの乗客の身の安全を預かる鉄道事業者として、組織運営上の決定的な欠陥を抱えた状態にあることは明らかだ。

ただでさえ国鉄が分割・民営化された1987年から、JR北海道は多くのハンデを抱えていた。人口が集中する札幌圏を除き、路線の多くは利用者が少なく採算が合わない。また、保線距離が長いうえに、冬の積雪で線路が傷みやすく、補修の費用もかさむ。国が用意した7000億円弱の経営安定基金の運用益で何とか黒字を確保するが、地域の足を守るため、今や連結ベースで売上高の6割を占める物販やホテル、不動産事業など鉄道以外の収益に頼らざるをえないのが実情である。

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