JR東海vs.静岡県、「因縁の15年バトル」の行方 過去には「通過税」騒動、今はリニアが争点に

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リニア中央新幹線の建設工事が各地で始まっている。JR東海は2017年11月に品川駅での工事を初公開した。品川駅のリニア開業は2027年で、東海道新幹線の地下40メートルを走らせる計画だ(撮影:尾形文繁)

実は、川勝知事は「リニアは重要な事業」とも発言しており、リニア自体に決して反対しているわけではない。むしろ発言内容で注目したいのは「(静岡県民にとって)何のメリットもないリニアは静岡県にはいらない」という部分だ。裏返せば、静岡県にメリットがあるリニアなら賛成ということになる。

前述のとおり、リニアが静岡県に直接メリットを与えることはないが、間接的なメリットは考えられる。2027年にリニア東京―名古屋間が開業すると、同区間をスピーディに移動したい人は新幹線からリニアにシフトする。つまり、東海道新幹線は現在のひかり、こだまタイプが中心のダイヤになる可能性が高い。

リニア開業で新幹線の利便性向上に期待

そうなれば、静岡県内のひかり停車本数を大幅に増やすことができ、「のぞみ通過待ち」が減ることでスピードアップも図られる。ひょっとしたら空港新駅も実現するかもしれない。JR東海は「リニア開業後は東海道新幹線のダイヤに余裕ができる」としか語らないが、これも裏返せば、過密ダイヤを理由に拒んできた施策がリニア開業後に実現し得る、ということである。

東海道新幹線・東京―新大阪間552kmのうち、静岡県を走る区間は全体の3分の1を占める。静岡県はJR東海にとって重要な経営基盤ともいえる。これまでどこかぎくしゃくしていた両者の関係が、リニア開業をきっかけに改善の方向に向かうかもしれない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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