JR東海vs.静岡県、「因縁の15年バトル」の行方 過去には「通過税」騒動、今はリニアが争点に
静岡駅も浜松と状況は似たり寄ったりだ。静岡市も政令指定都市で人口約70万人。製造業が集積し、多種多様な工場が日本のものづくりを支えている。富士山世界文化遺産の構成資産に登録された景勝地「三保の松原」も静岡市内にある。だが、やはり新幹線は朝と夜に4〜5本止まる時間帯があるものの、日中は1時間に片道3本しか止まらない。
首都圏を除く政令指定都市は、札幌、仙台、新潟、静岡、浜松、名古屋、京都、大阪、堺、神戸、岡山、広島、北九州、福岡、そして熊本の15都市。新幹線がない札幌と堺を除けば、速達タイプの新幹線が素通りするのは静岡と浜松だけだ。しかも、停車する本数も少ないとなると、政令指定都市の交通インフラとしては脆弱だ。
静岡、浜松だけでなく、熱海、三島、新富士、掛川と、静岡県内の新幹線駅は6駅もある。東海道新幹線全17駅の3分の1を占める。だが、これら6駅すべてをのぞみは通過する。県や沿線自治体がのぞみの県内停車の必要性を訴えた時期もあったが、その声はJR東海(東海旅客鉄道)に届かなかった。
静岡県知事が実質値上げに猛反発
「静岡軽視だ」として、当時の石川嘉延・静岡県知事が不快感を示した一件が2002年に起きた。速達性の高いのぞみの指定席特急料金はひかりやこだまより若干高く、JR東海は、2003年の品川駅開業に伴うダイヤ改正で、ひかりとこだまの特急料金を割高なのぞみと同一にするという考えを打ち出した。これが、のぞみを利用しない静岡県民にとっては実質値上げと映った。石川知事は、「県内を単に通過するだけののぞみは通さないくらいの気持ち」として、県内を素通りするのぞみに「通行税」を課すことを「真剣に検討する」と述べて物議を醸したのだった。
県の強硬姿勢が功を奏したのかどうかは定かではないが、ひかりとこだまの実質値上げは回避された。さらに県や自治体はひかり停車本数の増加をJR東海に迫る。実際、ダイヤ改正の都度、少しずつ改善し、2003年に上下16本だった浜松駅のひかり停車本数は現在34本に倍増、静岡駅も同34本から37本に増えている。
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