パブコメに突如表れた「証取委幹部」の執念 東芝・歴代社長立件の可能性は消えたのか
ただ、「必要な部材を有償支給するバイセル取引自体はありふれたもの」とする東京地検の現役検事と、「毎四半期末に不自然に集中するバイセル取引は通常の取引ではなく粉飾目的以外の何物でもない」とする佐渡委員長との見解の溝は埋まらなかった。
佐渡氏は2016年末に退任。後任の長谷川充弘委員長は就任時、「(東芝の)資料は前委員会からすべて引き継いでいる」と歴代社長への調査継続を示唆していた。
だが、就任から1年強が経った現在、証取委は東芝の歴代社長の立件を金融庁に勧告するには至っていない。
前代未聞のパブコメの真意は何か
浜田委員は1952年生まれ。早稲田大学理工学部を卒業後、公認会計士試験に合格した異色の人物だ。中央青山監査法人、あずさ監査法人を経て、2015年に青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科特任教授に就任した。
教授時代の2016年に著した『粉飾決算』で東芝の不正会計を分析。問題となったバイセル取引について、「監査人が問題視した形跡がない」「監査人が本当に(不正を)知らなかったとすると、ほとんど監査らしい監査をしていなかったからではないか」「実態を監査人が『見ている』にもかかわらず、適切な監査になっていない。同じ公認会計士として暗澹たる思いだ」などと書き、注目を集めた。
浜田委員はこの著書の出版後、2016年末に委員に就任。東芝の不正会計を鋭く批判する専門家の委員会入りで、「歴代3社長の立件に本腰を入れるつもりなのでは」と就任当時に注目を集めた。
証取委の現役委員がASBJにパブコメを寄せるのは前代未聞である。浜田委員は、証取委の事務局に事前報告や調整などはしていないようだ。浜田委員自身、パブコメはこれが初めてという。
前代未聞のパブコメであえて東芝のバイセル取引に言及した真意は何か。不正会計を指示したと見られる歴代3社長のうち西田厚聰氏は昨年12月8日に死去したが、佐々木則夫氏、田中久雄氏はまだ生きている。
佐々木氏や田中氏の立件は本当にありうるのか。上場廃止の危機が遠のき、東芝の不正会計への関心も薄れつつある中、浜田委員のパブコメは少なくとも事件の風化を押しとどめる意味はありそうだ。
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