ユーロスター「オランダ乗り入れ」意外な盲点 利便性向上は「片道だけ」の不思議

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英国内を駆け抜ける新型ユーロスターe320。アムステルダムまでの所要時間は3時間41分を予定している(筆者撮影)

2017年8月29日付の記事「欧州統合の象徴『ユーロスター』に4時間の壁」では、英国と欧州大陸を結ぶ高速列車ユーロスターのアムステルダム乗り入れに関する同記事執筆時点での状況と、延長に際しての問題点をお伝えした。その後、ユーロスター社は2018年2月9日、アムステルダムへの延長運転を4月4日から開始すると正式にアナウンスした。

既報のとおり最初は2往復からのスタートとなるが、途中駅のリールを通過させることで、ロンドン発アムステルダム行きの所要時間は当初計画の4時間10分から約30分も短縮され、最速3時間41分となる。所要時間で4時間を切ることになれば、航空機に対して十分なアドバンテージを保つことができると期待される。

だが、直通運転を行うのはロンドン発の列車のみだ。ユーロスター社によると、少なくとも2019年12月のダイヤ改正まで、オランダからロンドンへ向かう場合はまず別の高速列車であるタリスに乗車し、ブリュッセルで本来のユーロスターへの乗り換えが必要になるという

これにはどういった事情があるのだろうか。

列車の利点は「出入国が楽」

前出の記事でも説明しているが、ユーロスターの起終点となる英国ロンドンは、EU圏内にありながら、パスポートチェックや税関などを省略する「シェンゲン協定」に含まれていない。つまり、必ず出入国審査場でパスポートのチェックをしなければならない。ユーロスターは、出発駅ですべての審査を完了させたうえで乗車する。そのために、乗客は発車時間の30分以上前に改札を通り、X線による荷物検査を受け、それから出国審査、入国審査を受ける。

言い換えると、審査が終わった後の待合室は、すでに国外(英国であれば大陸側、ベルギーやフランスであれば英国)ということになる。さまざまな行き先がある国際空港の旅客機と異なり、ユーロスターの行き先は、英国もしくはヨーロッパ大陸側しかないので、出国審査と同時に入国審査を済ませても、基本的には問題がないのだ。空港での到着後に待ち受ける入国審査の行列を考えれば、これは鉄道ならではの利点と言える。

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