刑事に恋をし、殺人犯になった女性の「想い」

「身に覚えのない」殺人罪で12年服役した

獄中から冤罪を訴え続け、2度目の再審請求でようやく、大阪高裁の後藤眞理子裁判長が「警察官などから誘導があり、迎合して供述した可能性がある」と裁判のやり直しを認めた。

認めると急に優しくなる刑事

なぜ刑事に恋したのか。週刊女性は昨年末から西山さんに単独インタビュー取材を申し込み、1月中旬に滋賀県内で約1時間半、話を聞くことができた。会見や支援者集会の疲れが残っている様子だった。

看護の仕事に情熱をそそいできた=2002年撮影(写真:週刊女性PRIME提供) 

西山さんは、「事件当時、恋人はいませんでした」と振り返る。

暴力的、強圧的態度から一転、優しく接するのは取り調べ担当刑事の常套手段とされる。しかし、そんなことは知らず、その刑事を「優しい男性」と思い込んで好意を抱いてしまったという。

事件のカギを握るのがアラーム音だ。人工呼吸器のチューブがはずれるとアラーム音が鳴る仕組みだった。西山さんが故意にチューブをはずしたのであれば、アラーム音は当然鳴る。アラーム音を聞いたのか。男性刑事は迫った。

「私が“アラームは鳴っていなかった”と言うと、“そんなはずはない、嘘つくな”と机をたたき、密室なので怖かった。でも、“鳴っていた”と認めると急に優しくなった」と西山さん。

滋賀県長浜市の農業高校を卒業後、別の病院で働いていたが、湖東記念病院に移って半年たたないうちに“事件”に巻き込まれた。西山さんには発達障害があり、情緒不安定なときがある。あれこれ責められるとパニックになり自暴自棄になる一面もあった。取り調べという精神的にきつい環境で、ときおり優しい顔を見せる男性刑事に魅かれた。

別の病院に在職中、職場の仲間と沖縄旅行(写真:週刊女性PRIME提供)

男性刑事は、「殺人罪でも執行猶予で刑務所に入らないでいいこともある」と話したり、混乱した西山さんが拘置所で規律違反をすると、「私が処分を取り消してあげる」などと持ちかけたという。

しかし、その後の捜査で、ほかに誰ひとりとしてアラーム音を聞いた人は出てこなかった。男性刑事に「鳴っていた」と言わされた西山さんの供述は不自然になり、最終的に西山さんがアラーム音を消す操作方法を発見して犯行に及んだとするシナリオに軌道修正された疑いがある。

男性患者の死因についても不可解な点がある。

鑑定医は「酸欠による窒息死」とした。しかし、警察から「呼吸器がはずれていた」との情報を得て鑑定書を作っており、信憑性には疑問符がつく。

西山さんの弁護団は、「植物状態だった男性はカリウム値が異常に低く、致死性不整脈で病死した可能性が高い」とみる。

主任弁護人を務める井戸謙一弁護士は、不自然な供述変遷に“捜査誘導”を確信し、

「事件でも事故でもない。なかった犯罪を警察と検察がでっち上げたのです」

と断言する。

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