「マレーシア新幹線」日本の受注が難しい理由 オール日本は機能不全、中国は在来線で圧勝

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今回の案件は日本が得意とする円借款による政府開発援助案件ではなく、完全にB to Bの案件である。加えて、わが国が大型案件として抱えるインド高速鉄道プロジェクトに多くの人材を割かれており、物理的に2つの大型パッケージ型鉄道インフラ輸出案件を同時並行的に進めることが、そもそも可能なのかという問題もはらんでいる。

まして、高速鉄道のオペレーションなど、本当に人材が限られてくる。ある下請け業者は言う。「シンガポール―マレーシア間の高速鉄道は中国でほぼ決まりと見込んでいたのに、公式見解としてこのように言われると、嫌でも手を上げざるを得ないのではないか・・・」と。

マレーシア、ナジブ政権の動向も危惧される。マレーシアといえば、日本人に学べという「ルックイースト政策」で知られているが、もはやこれは過去の話である。マレーシアではマレー語、英語、中国語が必修科目とされていることもあり、2009年に就任したナジブ・ラザク首相は、東南アジアの首脳クラスとしては珍しいマンダリン(中国語)話者でもある。事実、習近平国家主席との巧みな交渉術で、中国から多額の経済援助を引き出すことに成功している。

2016年には中国の借款で、クアラルンプールからマレー半島を東西に横断し、ナジブ首相の故郷、パハン州を経由し、東海岸へ抜け、最終的にタイ国境近くへ至るイーストコーストレールリンクの建設が決定し、2017年に中国交通建設により着工したというのも記憶に新しいところだ。従来、南北を縦断する鉄道しか存在しなかったマレー半島において、最高時速160㎞、1435mm標準軌、貨客両用という大陸標準の準高速鉄道は、新たなムーブメントになり得る。

在来線でも中国製が幅を利かせる

在来線においても、近年、露骨とも言えるほど、中国勢が幅を利かせている。

マレーシアを走る中国中車製の通勤電車「クラス92」。クアラルンプール近郊はこの車両で統一された(筆者撮影)

マレーシア国鉄(KTM)が運行するクアラルンプール近郊の通勤電車、KTMコミューターでは開業以来、オーストリア製、南アフリカ製、韓国製車両が入り乱れて使用されてきたが、2010年から中国中車製の新型車両が大量に投入され、既存車両をほぼ一掃した。この車両はマレーシア運輸省が中国中車と契約し、KTMに使用させており、政治的意思の介入を暗示させる。

しかも、メンテナンスまでもカバーする包括契約で、KTMスレンバン工場は今や中国中車のマレーシア工場と化している。50人以上の中国人技術者が駐在し、電車メンテナンスを引き受けている。車両故障はかなり発生しているようだが、本国の技術と取り寄せたパーツですぐに改修されているようだ。

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