【産業天気図・銀行】国際金融市場の混乱と国内の倒産増加の挟撃で雨降り続く。財務の弱い正念場の銀行も
08年10月~09年3月 | 09年4月~9月 |
銀行業は2008年度後半、09年度前半とも冷たい雨が降り続きそうだ。
銀行を取り巻く状況は厳しく、なかなかプラスの材料が見当たらない。現下の金融市場の混乱で、投資信託はさっぱり売れない状況になってしまった。「貯蓄から投資へ」を合言葉に、個人客の基盤を生かして、預金を投資信託や変額年金に誘導するセールスを続けてきた銀行。2007年の前半までは、外貨建ての運用で成績も上がり、売れ行き順調だったが、昨年夏以降の混乱でぱったりと止まってしまった。定額保険の販売などで工夫してもとても埋めきれず、08年4~6月期(第1四半期)の実績を見ると、手数料収益である役務利益は前年同期比半減といった状況だ。
一方、本来の銀行の本業とも言うべき、資金利益はどうか。こちらも、政策金利の引き上げが止まってしまい、預貸利ザヤの改善にストップがかかってしまった。貸し出し利回りの上昇はすでに一巡。銀行によっては、足の長い預金利回りの上昇が続き、かえって利ザヤが縮小したり、資金需要のない地方では、競争で貸し出し利回りがさらに低下する事態となっている。預証利ザヤ(預金利回りと有価証券で運用して得る配当や利息の利回りとの差)も投資信託の配当減少などで振るわない。従って、資金利益も、預貸のボリュームが伸びているごく一部の優良地銀を除き減少ぎみである。
収益が上がらない上に、不動産・建設業者を中心に相次ぐ破綻で与信費用(貸倒引当金・貸倒償却費用)は膨れ上がっている。おおむね、年間計画の半分の費用を第1四半期だけで使ってしまったというのが実態だ。この背景には、不良債権問題に苦慮した経験から、一社あたりの融資額は少なく抑えるなど、リスク分散が進んだ結果、メガバンクなど大手銀行は、危ない企業向けの融資を落としやすくなったという事情もある。九州地域の地銀はことに厳しく、宮崎銀行<8393>が今09年3月期は赤字転落するほか、大分銀行<8392>や十八銀行<8396>も今期は利益が縮む見通し。また、財務的に弱い第二地銀は厳しく、今後再編を余儀なくされる銀行も出るだろう。
個別銀行で見ると、大半が減益になりそう。前08年3月期にサブプライム関連の大きな損失を出した3大メガバンクグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>、三井住友フィナンシャルグループ<8316>、みずほフィナンシャルグループ<8411>は減益にこそならないものの、期初の業績見通しからは減額となりそうだ。
厳しいのは新生銀行<8303>、あおぞら銀行<8304>の公的資金注入行で外資系の2行。あおぞら銀行は米GM(ゼネラル・モーターズ)の金融関連会社GMACの株式での損失に加え、国内の与信費用、破綻したリーマンブラザーズ向け債権の損失が加わる。今09年3月期純益見通しは150億円に下方修正したが、さらなる下振れもあり得る。新生銀行もリーマン向け貸倒損失が邦銀で最多の380億円が発生し、今09年3月期純益は120億円に縮む見通しだ。
【大崎 明子記者】
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