ヤフー、「若返り」に透ける創業22年目の焦燥 社長交代で新進気鋭のベンチャーと戦えるか

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ヤフーは宮坂体制の下、まずはパソコン軸からスマートフォン軸へのサービス移行を強力に進めてきた。加えて、2013年からはEC事業でも勝負に出た。ヤフーショッピングの毎月の出店手数料と、売り上げロイヤルティ(システム手数料)を無料化し、出店者数と商品数を大幅に増やした。こうした取り組みについて宮坂社長は、「まだ途中段階ではあるが、ある程度大きな前進ができた」と話す。

ヤフーが次の目標に掲げるのは、「データの会社」として存在感を増すことだ。「ヤフーは(創業から)21年間、サービスを通じて膨大なデータを蓄積してきた。そのデータの力をより解き放っていきたい」(川邊氏)。具体的にはネット広告やECなど、すでにある事業の収益性をデータを活用してさらに上げていくほか、ヤフーの蓄積しているデータを用いた他社に対するソリューションビジネスなども構想しているという。

宮坂学・現社長(左)は、ヤフーが100%出資する新会社で新規事業開発に取り組む(撮影:今井康一)

宮坂社長も退任後、新たな挑戦に乗り出す。新会社「Z(ゼット)コーポレーション」を設立、代表に就任し、ヤフーとは別組織で新規事業の開発に勤しむという。社名の「Z」には「Y(ヤフー)の次」という意味を込めた。取り組む事業や経営体制について詳細は明かされていないが、「ヤフーでやれないこと」にフォーカスするという。

「事業を回して成長させていこうとすると、今ある事業を掘り下げようという”知の深化”の方向に行きやすい。だが、(まったく新しい領域での)”知の探索”がなければ未来は作れない。今のヤフーのドメイン(事業領域)に当てはまらないようなことをやってみたい」(宮坂社長)

競争相手は手ごわい”爆速”ベンチャー

宮坂社長は就任以来、スピード感を持ってヤフーの組織とサービスをアップデートし続ける「爆速経営」を標榜してきた。前述の通り、スマホシフトやEC事業の拡大では確かな成果が出ている一方、国内IT業界だけを見ても、次々と新しい領域に踏み出すメルカリやDMM.comなどのほうが“爆速感”を醸すようになっている。

宮坂学・現社長と川邊健太郎・新社長は、二人三脚で”爆速経営”に取り組んできた(写真は2013年、撮影:今井康一)

川邊氏もヤフーの置かれている競争環境を楽観視していない。「客観的にヤフーをみると、下からは気鋭のベンチャーに突き上げられ、上を見れば(グーグル、アマゾンなど)テックジャイアントといわれる巨大なグローバル企業がいる。両挟みの状態だ」。

その中でどう戦っていくのか。「ベンチャーに対しては、やはり大きなネット企業ならではの組織力、資金力、ユーザーの多さを武器にサービス開発を行っていく。一方、テックジャイアントに対しては、やはりデータの力が重要になってくる。おそらくヤフーは、日本に住んでいる方についてのデータをいちばん持っている会社。これを利活用することで競り勝っていきたい」(川邊氏)。

スタートアップの経営者の中には、生まれたときからインターネットが身近にあったネットネイティブ世代が出てきている。ヤフーは彼らに負けない発想力、スピード感を持ち続けられるか。若返り人事の真価が問われる。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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