首都圏「大雪時の間引き運転」は逆効果だ 増発すれば列車がラッセル車代わりになる

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極論を言えば、むしろ増発すべきだ。大雪時は、ブレーキ始動点を早くせざるをえないため走行時間が伸びる。ホームで待つ乗客は足元がすべって乗降に手間取り停車時間が伸びることもある。山手線の例で言うと、本来なら1周65分のところ68分になるなら、駅間停車を避けるため間引き運転をしているわけだが、20本の在線を逆に21本に増やすことで通常と同じ輸送力を実現できる。

分岐器のすき間に雪塊が落ちると、ポイントが切り替わらなくなる(写真:skylark/PIXTA)

また今回は、14時30分に大雪警報が発令されたのを機に早め帰宅が大量に発生したので、より積極的に増発すべきだった。それには、夕方ラッシュに合わせた勤
務開始の乗務員に2時間前くらいに出勤してもらい、通常は16時30分頃から出庫が始まるのを2時間くらい繰り上げればよい。それをスムーズに実行できるよう、運行管理システムの機能向上も望まれる。

もともとの運行本数の少ない路線や時間帯では、より積極的に増発すべきだ。列車と列車の間隔が開くと、最悪、11~12日の信越本線のように途中で立ち往生しかねない。

絶対に対処が必要なのは分岐器だ。列車から落下した雪、特に氷塊がトングレール(分岐器に使用される先端の尖ったレール)の先端に挟まり不転換となるケースが多い。豪雪地では、電熱式・灯火式・水流式等でそれを除去する設備が整っているが、首都圏はそうではない。

潔く全面的に止めるという決断も

首都圏のほとんどの路線はPRC(Programmed Route Control)となっており、コンピュータに登録されたダイヤのデータに基づき分岐器が転換される。通常は列車の接近や出発の間際に分岐器を転換し、その際に不転換が検知されてからの対処となり、列車を止めることになる。列車が接近しなくても定期的に分岐器が転換されるようなデータを入れておけば、異常を早い段階で検知することが可能になる。その情報をもとにすばやく対処すれば、列車を長時間止めずに済む。

さらに、折り返し列車のある駅の特定の分岐器など、転換する分岐器は限られており、そこには氷塊の除去のための人を見張り員と一緒に張り付ける。相当の人手を要するように思うかもしれないが、列車の安定運行のために要する全体の人数からしたらわずかにすぎない。

大雪時は、間引かずに、むしろ増発すべきと提案したが、ひたすら走らせればよいというものではない。本当の大雪が降った場合は、潔く全面的に止める。繰り返すが、間引きして運行するのが最悪だ。次々と走らすか、ピタッと止めるか、大雪のときは2つに1つとすべきなのだ。

阿部 等 ライトレール社長

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あべ ひとし / Hitoshi Abe

1961年生まれ。東京大学工学部都市工学科卒業、同大学院修士課程修了。1988年JR東日本入社。2005年ライトレール創業。交通や鉄道にかかわるコンサルティング・研究開発に従事。著書に『満員電車がなくなる日 改訂版』(戎光祥出版)。

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