「男同士のイチャイチャ」はなぜ"危険"なのか

「男社会」はこれほどまでにややこしい

一口に同性愛差別と言っても、そこには複雑な問題があります。手をつないでいる女子高生は、しばしば見かけるはずです。では、男子高生はどうでしょうか。まったくと言っていいぐらい見かけませんよね。

女性の場合、アイドルやモデル、あるいは俳優など同性の芸能人を「好き」だと言っていても、周囲は「普通」に受け止めます。男性が同じ発言をすると、「違和感」を抱く人が少なくないと思います。ひょっとすると、「気持ち悪い」とはっきり言われることさえあるかもしれません。ちなみに、僕は『トップガン』の頃からトム・クルーズが大好きで、『ラスト サムライ』が上映された際には写真集も購入したのですが、そのときは「どうして?」と理由を尋ねられました。

男性の同性に対する親密さやあこがれの表明は、女性と比較して「同性愛」的と解釈されやすいことがわかります。そして、男性には「『同性愛』者と『誤解』されるような言動を取るべきではない」というルールを課せられているのです。したがって、日頃から、男性は異性愛者としての自分をアピールするために、女性への性的関心を懸命に表明したり、同性愛男性に対する嫌悪を過剰に示したりすることになります。

以上の説明で、女性はお互いを褒め合うのに、職場で「お前の髪きれいだな! どこのシャンプー使ってるの?」や「お前って仕事できるな! あこがれちゃうぜ」という言葉を男性が交わさない理由が明らかになったと思います。

男同士が「イチャイチャ」しているCM

それでは、どうして現実では無理なのに、男性向け化粧品のCMでは、男性同士が親密にできるのでしょうか。この疑問について考えるために、簡単に男性向け化粧品のCMを振り返ってみます。

50歳以上の世代であれば、西部劇で活躍したハリウッドスターのチャールズ・ブロンソンが出演するマンダムのCMを覚えているはずです。「いま開かれる男の世界」というナレーションから始まり、チャールズ・ブロンソンが馬を引き連れて荒野を歩きます。最後には、「男らしさとは 男臭さとは 男のドラマを演出する新しい男性化粧品 マンダムは男の体臭」とナレーションが入り、チャールズ・ブロンソンが「うーんマンダム」と決めゼリフを発して終わりです。

女性が登場しないのはもちろんのこと、ほかの男性もまったく出てきません。卓越した「孤高の存在」として誰の助けも借りることなく、1人で道を切り開くのが〈男らしさ〉であるという強いメッセージを感じます。意図するところは、1969年から40年以上にわたってネスカフェのCMに使用されてきた「違いがわかる男(ひと)のゴールドブレンド」と共通していると言えます。

ただ、高度成長期後半の男性向け化粧品のCMにおいて、このようなタイプの〈男らしさ〉が支配的であったとはいえません。チャールズ・ブロンソンのCMだけを取り上げて、「昔は良かった」と嘆いてみたり、逆に、「さすが昭和」と揶揄したりするのは、いずれも早計です。1968年に放送されたMG5(資生堂の男性用整髪料)のCMでは、団時朗さん―『帰ってきたウルトラマン』で隊員を演じた―を記憶されている方もいるかと思います。団さん演じる若者が、後続車にいくら煽られても、サングラスをかけた姿で悠然とマイペースで運転を続けます。

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