アラフィフ世代は「55歳の崖」を知らなすぎる 「役職定年」を甘く見ると、老後は貧しくなる

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厚生年金基金に加入している人、あるいは過去加入していた人については、ねんきん定期便に記載されている老齢厚生年金額(再度E欄を参照)は本来の老齢厚生年金よりも少なく記載されています。これは厚生年金基金の代行部分といって、厚生年金基金の財源として使われていた厚生年金保険料分の年金は、基金から支払われるため、ねんきん定期便には載ってこないからです。

もし確認したい場合は、49歳時点で届いたねんきん定期便と50歳時点でのねんきん定期便を見比べてみてください。前者の老齢厚生年金額が後者のそれより大きければ、その差分が厚生年金基金の代行部分の目安です。

これは、50歳未満のねんきん定期便は厚生年金基金の加入状況を無視してざっくり計算されていますが、50歳以上になるとより精緻に計算が行われるためです。いずれにしても厚生年金基金には代行部分のほかに上乗せの給付がありますので、これを機会に厚生年金基金に問い合わせすることをお勧めします。

公的年金の見込みがたったら、会社の退職金、企業年金についてもう少し情報収集してみましょう。最近はポイント制を導入している会社も多く、毎月の給与明細に記載されているポイントで現時点での退職金額や企業年金を確認できるようになっているところも増えています。ただしそうであっても、その「給与明細の見方」さえ知らないという人もいますので、それではいけません。

会社が「かつては退職一時金だった、厚生年金基金だった、それが確定拠出年金に変わった」という人は「想定利回り」をご存じでしょうか? 会社は毎月確定拠出年金の掛金を拠出してくれているわけですが、一般的には年2.5%程度の利回り分を割り引いてそれが算出されています。

かつての退職一時金や厚生年金基金は、会社が掛金を拠出し、そのおカネを会社が「運用」して、将来の支払いに備えていました。しかし確定拠出年金はその掛金が「前払い」される制度であり、そのおカネは「運用前」のおカネですから、もし会社が積み立て額を計算する際に用いた運用利回り以上の資産運用ができなければ、従来受け取るはずだった「退職金額」には及ばない状況となるわけです。確定拠出年金の仕組みはすばらしいものですが、制度導入の背景を理解したうえで取り組まなければその良さも半減してしまいます。

確定拠出年金を自分で見直し、おカネを作る努力を

確定拠出年金のポートフォリオは、自分で見直しましょう。会社にマッチング拠出があれば、始めましょう。もし会社に確定拠出年金がなければiDeCo(個人型確定拠出年金)もありますし、一般NISAや2018年から始まった「つみたてNISA」もあります。まだまだこれからおカネを作っていくチャンスはあるのです。あきらめてはいけません。

今回相談に来た山田さんは新卒で今の会社に入り、「転職経験もなく、ほかの会社でやれるほど自分にスキルがあるとは思えない。今さら転職してもうまくいく自信がないから、役職定年も、その後の時給も受け入れるしかない」と言っていました。しかし、長年まじめに働いてきた人にスキルがないわけがありません。ご自身のこれまでの「仕事の棚卸し」をするのも良い機会です。そのうえで、これからの働き方を考えるのも良いでしょう。

ファイナンシャルプランナーは魔法使いではありませんから、「ない」を「ある」に変えることはできません。しかし、今回説明してきたように、ぼんやりとしか見えていなかったものをクリアにして差し上げることはできます。クリアになったところで、動くのは顧客自身です。家計を引き締めて収入サイズに合わせた生活をするのか、役職定年などがない仕事を考えるのか、保有資産を見直して資産運用に取り組むのかをしっかり考えてもらうことになります。そして、方向性が定まったら再度面談をさせていただき、具体的な作戦会議に入るのです。

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー、FP相談ねっと代表

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やまなか のぶえ / Nobue Yamanaka

FP相談ねっと代表。一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。アメリカ・オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。「楽しい・分かりやすい・やる気になる」ビジネスパーソンのためのライフプラン相談、講演を数多く手掛ける。大手新聞社主催のiDeCo(個人型確定拠出年金)やNISAセミナーの講師など登壇も多数。金融庁のサイトで、有識者コラムを連載。著書に『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『100人以下の会社のためのiDeCo&企業型DC楽々活用法』(日本法令)ほか。公式サイト

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