【産業天気図・空運】燃料高に費用削減追いつかず。相次ぐ値上げで旅客需要も鈍く曇り空続く
08年10月~09年3月 | 09年4月~9月 |
航空業界は2008年度後半、09年度前半とも「曇り」模様が続きそうだ。歴史的な航空燃料高は断続的な運賃値上げ等で吸収を図るが、一方で旅客需要の低迷も招くため、しばらくは神経質な展開が続くのは必至な情勢だ。各社ともパイを大きく伸ばせない中、今後はどこまで費用削減の余地があるかで雌雄を決することになる。
航空燃料の代表的指標であるシンガポールケロシンは昨年比2倍程度に膨らむなど高騰を続けている。日本航空<9205>、全日本空輸<9202>ともに想定水準を大きく上回るなど、利益圧迫要因となっている。航空会社は変動費抑制のため、先物予約を駆使して今09年3月期分をほとんど事前購入しており、直近での原油高による利益変動は少ないものの、高止まりした段階で購入を続けており、費用増を招いている。
燃料高対策として、各社は国際線では燃油サーチャージ〈燃油特別付加運賃)値上げを今年10月実施予定、国内線はすでに4月に値上げした。さらに今年下期からは日本航空、全日空は国内線を中心にそれぞれ20便、10便程度を廃止または減便する。合わせて機材小型化も進めており、少しでも燃料費を削減することに必死だ。ただ、景気低迷等で国内線を中心に旅客需要は低迷、縮小均衡の道に入っており抜本的な打開策にはなっていないのが実情だ。また、燃費が2割向上するという米ボーイング社の最新鋭機「B787」の3度の納入遅延も大きく響き、さらなる機材計画の練り直しも迫られている。
唯一、明るい材料は国際線の一部。ニューヨークやロンドン、パリ等で高単価のビジネス客が下支えしており、さらに客数を伸ばすため、座席リニューアルも急いでいる。それでも、世界景気の先行きに不透明感が漂う中、ビジネス需要だけに頼るのは危険だ。今後は外部要因に寄らず安定需要が見込める国内線の競争力強化が急務であり、新幹線との競合に勝つだけの付加価値をつけることが必要といえそうだ。
【冨岡 耕記者】
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