「日ハム新球場」どっちの候補地がベスト? 実は「交通アクセス」も決め手になる

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事実上、札幌市案の中で最有力候補となった真駒内公園については、札幌市営地下鉄南北線真駒内駅から筆者の足で徒歩25分を要した。現地を実際に訪問して、バスやマイカーなどの道路交通への依存度増加にともなう球場周辺の渋滞悪化の懸念を感じた。現在の我が国のプロ野球の本拠地球場はいずれも鉄道駅から徒歩圏内に立地し、催事終了後の短時間に集中する観客輸送に鉄道が大きく貢献している。

他方、北広島市案の実現の課題として、ファイターズの前沢本部長は「新駅が重要だ。それは北広島市にも申し上げている」とするが、新駅設置には、北海道旅客鉄道(JR北海道)との交渉をクリアする必要がある。ファイターズが提示する「課題」に対して、北広島市の川村部長は「あくまでも個人的な見解」と断った上で、「新本拠地が当市に内定すれば、千歳線の利用促進にもつながる新駅は実現可能と期待している」との認識を示す。

ただし、新駅設置費用の負担をJR北海道から求められる可能性が高い。北広島市は新本拠地誘致のメリットとともに、公的負担の有無や大きさについて、市民へ丁寧に説明する必要がある。それでもなお、北広島市案が選定されるためには新駅設置の実現可能性が高いことをファイターズに示す必要があることに変わりない。

道内各地からのアクセスに強み

新駅の強みは、札幌(下り)方面および新千歳空港・苫小牧(上り)方面の両方向への輸送に対応できることである。また、あくまで筆者の私見であるが、仮に特急列車を3両増結の上で新駅に臨時停車させれば、特急の停車本数が上下4本の場合、1時間当たり800人程度の輸送力の上積みにつながると考えられる。さらに、特急の増結車両を新千歳空港駅発着とすれば、道外や道内遠隔地への輸送サービス向上にもつながる。

両方向の乗車人員が1:1であることが前提になるが、千歳線の列車をすべて6両とした場合の千歳線新駅発下り方面および上り方面の両方向を合わせた輸送力は、南北線真駒内駅発麻生方面の輸送力とほぼ同等である。

仮に北広島市案に内定した場合、新駅設置が決定されれば、新駅とボールパークを一体開発できるチャンスが生まれる。あるいは発想を転換して、駅そのものをボールパークの一部として整備することも考えられるだろう。

ファイターズの新本拠地がいずれの場所に決まるかは現時点では明らかではないが、札幌市、北広島市はそれぞれ、明確なまちづくりビジョンとして、新本拠地誘致後のまちの価値向上に向けた戦略を広く社会に示していくことが望まれる。そして、ファイターズも「アジアNo.1のボールパーク」を実現できるかどうかの観点から、十分な敷地面積とともに、鉄道アクセスを確保できる用地を選定することが重要ではないだろうか。ファイターズの本拠地移転構想を、鉄道・プロ野球・地域の連携のあり方について関心を深める契機としたい。

多くの鉄道事業者がプロ野球球団のオーナーとして名を連ねた時代があったことから、プロ野球界は鉄道と関係の深い業界であった。さらに今後の別記事では、鉄道・プロ野球・地域がともに発展する道筋を、プロ野球球団の取材を踏まえて考えてみたい。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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