月収12万の私が自覚してなかった貧困の真実 「100%自分が悪い」と自らを責め続けていた

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小林:でも、生活保護なのに高価なものを買えるわけがないし、そんなものは人からプレゼントされることもないですし。私がボランティアで働き始めてからは昼間家にいない日が多かったので、「なんで家にいないんだ。面談ができない」とか「面談ができないなら生活保護を切るぞ」と脅されたこともありました。きちんと日程を決めてくれたらこちらも家にいるのに、結局一度も訪問に来ることはありませんでした。

生活保護バッシングの真因

――数年前、芸人の母親が生活保護を受給していることが報道された際、生活保護バッシングがひどかったですよね。小林さんは受給時、世間に負い目などは感じましたか?

小林:それはものすごくありました。特に今は、インターネット上での叩きがすごいですよね。おそらくその方たちは「俺らの税金で生活をしやがって」というのが主流の意見です。じゃあ、友達の税金で生活をしている私はとてもダメな人間だ、友達に申し訳ないと、ずっと自分を責めて、しだいに人に会うのもやめていった感じでした。人との接点がどんどんなくなっていった時期でした。

雨宮:2012年頃から生活保護バッシングが激しくなったのは、「自分だってフルで働いているのに、生活保護以下じゃん」という人がいるからですよね。東京だと家賃含めて13万7400円が生活保護の上限だと思うのですが、給料が生活保護より低い労働者がいる。こんなに嫌な思いをして働いているのに「あいつらは何もしないでおカネをもらっている」みたいなバッシングが強まったのは、全体の低賃金化と、ブラック労働化のような、社会全体の労働の地盤沈下というものがあると思います。

だからと言って生活保護受給者をバッシングしていいわけではもちろんありません。でも、「だからこそ最低賃金を上げろ」という建設的な方向に行かず、バッシングに走ってしまうのは、弱い人がさらに弱い人を叩くというような構造ですよね。

逆に言うと、今は生活保護の人が「特権」に思えてしまうほど、全体が下がっている。公務員バッシングもそうです。バブルでみんなが稼げてウハウハの頃は公務員をバッシングする人もいませんでした。逆に、「公務員なんて低賃金で地味な仕事」と言う人もいたけれど、今は高給取りの象徴になっている。どちらも景気が良い時には決してバッシングはされないですよね。

――現在、無自覚だけど貧困層にあたる人もいますよね。

雨宮:めっちゃいますね。今、生活保護の捕捉率が2~3割と言われています。最新データでの貧困率は15.6%です。そして、生活保護受給者は216万人くらい。でも、貧困率15.6%ということは、貧困ライン以下で暮らす人は2000万人くらいいるということです。その2000万人のうちの216万人しか生活保護を受けていないということは、1800万人くらいが貧困ライン以下の生活なのに受けていないという計算になります。

だから、自分が貧困だと気づいているか、気づいていないかは別として、単純計算をすると制度に捕捉されていない層は1800万人くらいいるということになります。もちろん、その人たちに貯金があったりしたら別ですが、収入ベースで見るとそうなります。

貧困なのに生活保護を受けていないのは、まさか自分が対象だと思っていない。フルで働いて生活保護基準以下だと思っていないのです。

小林:私もそんなにまずい状況だと思っていなかったです。

雨宮:私自身もフリーターのときは思っていなかったです。

(後編へ続く)

姫野 桂 フリーライター

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ひめの けい / Kei Himeno

1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをしつつヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好きすぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナ。

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