パナソニックが女性CTO起用で目指す「次」 「テクニクス」を再構築した小川理子氏の挑戦
――高級オーディオ事業に投資することで高音質化ノウハウを獲得して多様な製品に広げるという話は、ブランド復活当初から言われていたことですね。昨年発売されたOLEDテレビEZ1000が最初だったと思いますが、秋発売の液晶テレビEX850シリーズは売れ筋価格帯も大幅な音質向上が実現され、驚きました。今後、こうした成功例が続けばパナソニック全体の価値になりえる。しかし一方で、テクニクス事業単体での収益化も、そろそろ取り組まねばならないのでは?
小川:ブランド構築という意味では、もともと世界中にファンがいたこともあり、早い段階で自立できました。世界各国の高級オーディオ店など、極めて専門的な販売チャネルがテクニクスについて前向きになってくれました。収益化のためには、さらに裾野を広げ、テクニクスブランドでのよりカジュアルな、しかし高音質の製品に展開していく必要があるでしょう。
しかし、性急にやりすぎてしまうと、せっかく開拓した高級オーディオのディーラーたちからそっぽを向かれてしまうかもしれません。音質追求、音楽を表現するための音を追求し、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との協業にまでこぎ着けました。より幅広い消費者との接点を構築していき、多くの方にテクニクス製品を買っていただくというミッションと、高級オーディオとしてのテクニクスのブランド価値の維持を同時に行っていく必要があります。
――具体的にはどのような取り組みをしていますか。
小川:インテリアになじみやすい一体型の高音質オーディオ製品として「OTTAVA f(オッターヴァフォルテ)」を昨年発売しました。ベルリン・フィルハーモニーとの協業で生まれた最初の製品でもありますが、これを英国の百貨店「ジョン・ルイス」から始めるなど、より一般的な消費者との接点を少しずつ増やしています。いきなり全店舗で始めるのではなく、たとえばフランスならばFnac(家電量販チェーン)の旗艦店のみで取り扱っていただいたり、米国の楽器販売大手のGuiter Centerが注目して販売してくれたりと、少しずつですが販売機会を増やしています。
2020年は「テクニクス55周年」の年
――“これからの3年”は何を目標とするのでしょうか?
小川:パナソニックの中期計画は3年単位ですから、次はまた3年後に目標を掲げて次のフェーズへと進みます。次の3年目は2020年、東京オリンピックの年ですが、同時にテクニクス55周年の年でもあります。そのタイミングで、われわれの持つ技術や知見を生かして新しいことに取り組んでいます。
――具体的な方向は定まっているのでしょうか。
小川:パナソニック全体としては、やはり“車をどうするか”が大きなテーマになってきます。自動運転技術が進むに従って、社内のエンターテインメントは重要になっていくでしょう。そして、住空間をどうするか。単体のオーディオ製品ブランドではなく、パナソニック社内のエコソリューションズ事業部と一緒になって、住空間全体に高品位のオーディオを届けられないか。
たとえば施工業者と一体になって、壁の振動を抑えながらスピーカーを設置。あるいは照明装置も含めた制御を提案するなど、クロスバリューで商品の価値を上げていくといったことはエコソリューションズ事業部を持つパナソニックだからこその展開です。
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