ビットコインは「物々交換の時代」を切り拓く ブロックチェーン後の未来の経済とは?
私自身、ここ数年間、資本主義の研究を続けてきた。そして今、資本主義というのは、市場経済と貨幣が結び付いて発生した現在社会を支える経済のOS(オペレーティングシステム)であり、そのOSが経済活動のみならず、政治や社会活動全ての前提になってしまった点に問題があると認識している。その中核にあるマネーの力は増しこそすれ、衰えることを知らないから、それをどう制御するか、どう社会に循環させていくかが最大の課題だと考えている。
物々交換という経済システム
ところが、著者によれば、元々、貨幣というのは物々交換を容易にする手段として生み出されたのではなく、信用に基づく取引が最初にあって、その後にそれを補助する手段として貨幣が生まれたのだと言う。
そして、物々交換という経済システムは、人類史上かつて存在したことはなく、ブロックチェーン技術によって、人類は初めて広範囲な物々交換を実現できるのだというのが本書のポイントである。
下図にある通り、贈与というのは、親が赤ん坊を育てる時のように、元々、人類の基本的なシステムとして存在しており、贈与抜きに社会は成り立ち得ない。そして、その次に来るのが信用のシステムであり、それを補完するのが貨幣だと言う。
これらに対して、物々交換は極めて限定された世界でしか成り立たないため、実際の取引は、常に信用取引として行われてきた。そして、取引の背後にある信用をユニバーサルなものとして担保し、未来のシステムとして真の意味での物々交換を可能にするのが、ブロックチェーン技術なのである。
著者はこうしたアイデアについて、人類学者デヴィッド・グレーバーの『負債論』からヒントを得たと言っている。ここには、「わたしたちが最初に学ぶことはそもそも仮想貨幣など新しくもなんともないということである。実のところ、それこそが貨幣の原型だったのだから」と書かれている。
つまり、ここでの「仮想貨幣」とは、銀行券なども含む信用に基づく貨幣のことであり、貨幣は、金貨・銀貨などの硬貨としてではなく、まず信用貨幣の形で人類史に登場したというのである。
その上で著者は、真の意味での物々交換が成立した暁には、貨幣そのものが消滅してしまい、それに伴って、銀行という機能も当然のように消滅することになると言う。つまり、金融というのは「経済の貨幣的側面」であり、今後、デジタル技術のインパクトを真正面から受けて貨幣が衰退すれば、金融が衰退するのも明らかだという訳である。
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