高倉健、2人の親友がいま明かす名優の素顔 少年刑務所の慰問で何を語ったのか

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その後、高倉健さんは生涯に何度か刑務所、少年刑務所で話をしている。いずれも本人にとっては長い話だけれど、実際にはせいぜい10分程度で、長い話ではなかった。遺作『あなたへ』(2012年)の撮影後、舞台となった富山刑務所を訪れ、映画の観賞会に合わせて、入所者たちに簡単なスピーチをしている。

講演があったのは2012年の秋、所内の講堂だった。

高倉健を紹介する係官の声はのんびりしたものだった。

─―それでは、ただ今から、招集行事を始めたいと思います。本日の招集行事の趣旨につきましては、すでに獄中放送をしているところではありますが、この機会に改めて説明したいと思います。

昨日、映画が公開になりました。東宝製作所製作、降旗康男監督の『あなたへ』という映画です。全国一斉公開となりました。この映画は、富山県地方の神輿(しんよ)の作業教官を主人公にして、亡くなった妻の生まれ故郷である長崎県の生月島という所へ旅をする途中、さまざまな人々と出会いながら、亡くなった妻との思い出を振り返り、妻の本当の愛情に接するまでを描いた作品です。

映画の中では、富山刑務所の作業教官役を、俳優の高倉健さんが、そして、その妻役を、女優の田中裕子さんが演じられています。昨年(2011)の9月上旬、高倉さんや田中さんが当所にお越しになり、約2週間の間、当所内外で撮影が行われました。

この映画の全国公開を機会にして、高倉さんから、映画撮影に協力していただいたことに対してお礼を述べいたいというお申し出がありまして、本日、関係者の方々が来所されました。(略)

静まってから語った言葉

さて、登場した高倉健は聴衆に向かって深々と頭を下げる。ここで拍手が起こる。係官が制する。しかし、拍手が続く。また、係官が制する。

高倉健は静まるのを待って周りを見渡す。そして、しゃべり始めた。

「初めまして。映画俳優の高倉です」

拍手で、なかなか次の文句を話すことができない。また、静まるのを待って、話し始めた。

「えー、昨年、この富山刑務所で、とてもお世話になりました。本日、みなさんがご覧になる『あなたへ』の大事なシーンをたくさん撮らせていただいたことに心から感謝いたします。本当にありがとうございました」

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