米国株は減税を加味してもやっぱり割高だ 突然やって来る「Xデー」への準備を怠るな

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すると米ドル円相場への影響だが、今のところは、「米長期金利上昇→米国債の以前より高い利回りを求めて投資資金が他国から米国債に流入→米ドル高」というシナリオで動いている。このため先週は、1ドル=113円60銭辺りまで、米ドル高・円安が進む局面があった。

しかし米長期金利の上昇が米株安を引き起こせば、「米長期金利上昇→米株安→米国以外の投資家が米国株を売却して自国に資金を引き揚げる懸念→米ドル安」という展開に化けることが懸念される。前回までの記事でも再三述べているように「いつそうなるか」というタイミングこそ不透明だが、「そう遠くないうちに、米国株価が下落し、米ドル安・円高も引き起こされて、そのため日本株も下落する」という展開を懸念している。

こうした悪いシナリオがすぐにでも実現化したとすれば(ただ、繰り返しになるが、すぐなのかどうかは、わからない)、「掉尾の一振」どころではないが、では、もしそうなった場合、クリスマスプレゼントやお年玉はないのだろうか。実は、市場内では、物色面で明るい動きも生じつつあるように感じる。

日経平均株価は、10月以降に上げ足を強めたが、前回のコラムでも述べたように、海外長期投資家が、日本の企業収益回復といった実態面を評価して現物株を買い入れたのではなく、海外短期筋が投機的に、日経平均先物を買って吊り上げた、という面が大きいと考えている。

業績の改善による株価上昇といった側面がないわけではもちろんなく、今年2万円を割れていた日経平均株価が2万円台を回復したのは、そうした実態面の裏付けがある。しかし、一時2万3000円を超えたような日経平均の上振れは、先物買いという「お化粧」が乗ったものだ。それが、NT倍率の上昇といった形で表れていた。

長期投資家が有望株を買う「正常化」の動きも

ところが、先週を含め、足元はNT倍率の低下が生じている。これは、短期筋が買い上げた日経平均先物を利食う一方、長期投資家などが、企業収益の実態などに基づいて、有望な現物株を幅広く買い入れているためだと考える。こうした「正常化」の動きは続くだろう。

とすれば、筆者が懸念しているような、米国株価の下落や米ドル安・円高によって、短期筋の日経平均先物売りが大きく嵩み、日経平均株価が大幅に下落したとしても、個別現物買いが幅広く入ることで、TOPIXや新興市場指数などの下落率は、限定的にとどまるだろう。規模別には、大型株劣位、小型株優位の展開になるのだろう。この場合、個々の投資家の現物株の保有ポートフォリオは、日経平均株価ほどは傷むまい。

さて、2017年最終週の日経平均株価だが、今週初は欧米のクリスマス休暇があり、週を通じても大きく市場を揺るがしそうなイベントが見出しにくい。このため、基調としては、動意に乏しい株価動向となりそうだ。ただ、すぐでないとしても、米国株価の調整が迫っており、今週は大幅に下落しないとしても、上値の重さは一段と強まると考えている。今週の日経平均の予想レンジは、2万2200~2万3000円としたい。

2017年を振り返ると、当コラムでは、10月の日本株の大幅な上振れを見通せず、読者の皆様には大変なご迷惑をおかけしたと、心苦しく感じている。それでも多くの読者に当コラムを読んでいただき、大変ありがたい。どうぞよいお年をお迎えください。2018年もご愛読のほど、何卒よろしくお願いします。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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