米国株は減税を加味してもやっぱり割高だ 突然やって来る「Xデー」への準備を怠るな

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これに対し、「いや、そんなことはない。法人減税で直接的に税引き後の1株当たり利益が増えるのだから、それを前提に計算すれば、予想PERはもっと低いはずだ」という反論はありうるだろう。

実は、今回の減税改革で、どの程度全産業の税引き後の利益が増えるかは、試算は難しい。赤字企業にとっては減税の恩恵は当面ない。加えて、既に企業は節税策を駆使している。本来は、一つ一つの企業についての減税効果を精緻に試算して、全て積み上げる必要がある。

当方のような零細自営業者にはそうして独自の試算を行なうことは難しいため、さまざまな調査機関などが公表しているものをみると、5%程度の税引き後利益押し上げ効果がある、といったものが多いようだ。ただ、上下院の税制統一法案が成立する前、まだ下院独自案の段階で、12%の利益押し上げ効果がある、と公表していた証券会社があった。

筆者が見る限りでは、その試算値が最大なので、それを前提に減税後の予想PERを計算してみると、それでも直近(先週)は18倍を若干ながら超えている。押し上げ効果が5%程度であれば、もっと割高だ。すなわち、現在の米国株価の水準は、法人減税をすべて考慮に入れても買われ過ぎだと言える。

米長期金利と米ドル円相場の関係は?

ただ、米国株価の割高さが、いつ正常化(つまり株価下落)するかどうか、正確にはわからない。とは言っても、きっかけとしては、たとえばロシアゲート捜査の進展や、中東情勢の不透明化など、さまざまなものが考えられる。

この他に気になるのは、米国の長期金利の動向だ。長期金利は、FRB(米連邦準備理事会)が利上げや債券買い入れの縮小を行なおうと、ひところよりも原油価格が上がろうと、それを無視して低位での推移を続けてきた。ただ、足元成立した減税は、財政赤字の拡大を引き起こして国債増発につながると考えても、景気刺激効果があると考えても、どちらにしても長期金利上昇要因と言える。このためか、これまで無視してきた連銀の金融政策やエネルギー価格の上昇が遅れて効いてきたためか、10年国債利回りはじわりと強含み、先週は一時2.50%近辺に達した。

それでも現時点ではまだ大した上昇ではない。だが、金利が一段と上昇すれば、米国株価の下落要因となりうる。というのは、これまでは長期金利が低いため、投資家は長期債で運用しても十分な利回りが得られず、リスクをとって株式や社債などに投資先を広げてきていた。これが長期金利の上昇で、株式から国債へと、資金の逆流を引き起こす可能性が高まるからだ。

次ページ遠くない時期に米国株安がやって来る懸念は変わらず
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