JR6社、車両故障やミスが最も多いのはどこか 新幹線台車に亀裂、鉄道の安全に"黄信号"

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トラブルの遭遇確率が低いからといって、安心は禁物だ。首都圏、あるいは新幹線でひとたび輸送障害が起これば、影響を受ける人数はJR北海道の比ではない。各社の1日平均輸送人員を部内原因による輸送障害の件数で割り、1回の輸送障害が影響を与える人数を計算してみた。

影響人数は輸送障害の回復に要する時間など諸条件に左右されるため、あくまでも参考値ではあるが、JR東日本5万1000人、JR東海とJR西日本がそれぞれ3万5000人、JR九州が1万1000人、JR四国が8000人、JR北海道が2000人という結果になった。JR東日本とJR北海道の差は実に25倍を超える。

「首都圏で輸送障害が起きると影響が大きい。だからこそ首都圏でいかに輸送障害を減らすかが課題である」と、JR東日本の深澤祐二副社長は11月30日の決算説明会で記者に語っていた。だが、それからわずか2週間ほどで京浜東北線の架線切れトラブルが起きてしまった。

コミュニケーション不足が問題?

JR西日本は2005年のJR福知山線事故を契機として、安全性向上に全社的に取り組んできた。実際、部内原因による輸送障害は目に見えて減っている。その努力をすり抜けて、今回の重大インシデントが発生した。

JR東海の柘植康英社長は12月20日の会見で「新大阪で床下点検をしてほしかった」と述べた。とはいうものの、新幹線の新大阪駅はJR東海の管轄だ。JR西日本が無断で列車の点検をするわけにはいかない。列車に乗っていたJR西日本の保守担当者が新大阪で下車したのも管轄が変わったからだ。今回のトラブルでは、JR西日本の保守担当者と指令員とのコミュニケーションの不備が明るみに出たが、はたしてJR西日本とJR東海のコミュニケーションは適切に行われていたのだろうか。

東京の新幹線総合指令所。JR東海やJR西日本の指令員が共同で仕事をしている(2010年筆者撮影)

東京の新幹線総合指令所ではJR東海とJR西日本の指令員が隣り合わせで仕事をしており、緊密な情報交換をできる仕組みは整っている。JR西日本の指令員と保守担当者のやり取りをJR東海の指令員が聞いていても不思議はない。新大阪で乗務員は交代し、保守担当社員も下車したので、事態は振り出しに戻ってしまったが、新大阪という会社間の境界を越えて両社の指令員が情報を共有していれば名古屋の手前で適切な対策を打てたかもしれない。両社の意思疎通の状況については運輸安全委員会の調査で明らかにされるだろう。

また、JR東日本の架線切れ事故は、原因こそ違うものの2015年にやはり京浜東北線で(「JRの架線切断が再発するかもしれない理由」)、2007年には宇都宮線で起きている。両事故では再発防止策が講じられていたが、今回は別の原因によって三たび事故が起きた。網の目をかいくぐるかのように事故が起きる。それでも事故撲滅に向けて突き進むしかない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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