2018年に投資家が注視すべき2つのチャート 米国利上げの影響と中国の経常収支がカギだ
一方の中国は10月の共産党大会以降、理財商品を含めたシャドーバンキングの規制が強化され始めており、中国の経済成長は6%台前半まで低下するだろう。その代わり、これまで景気拡大が遅れていたブラジルやロシア、インドなどの他の新興国が中国の減速をオフセットする形で、グローバル経済や輸出環境を支えると考えている。
したがって、2018年も引き続き、緩やかな利上げの下で企業収益が拡大する、いわゆるゴルディロックス(適温)相場が継続すると見ている。投資に対するスタンスは強気維持の継続が望ましく、資産であれば債券よりも株式の比重を高くし、通貨では日本円は日銀の緩和継続から弱い環境が続くため、外貨中心での分散が望ましい。ドル円は1ドル=112~118円のレンジで見ている。
FRBの利上げペースがポイントに
しかし、上記のシナリオにはいくつかリスク材料がある。まず注視すべき点はFRB(米国連邦準備制度理事会)の利上げペースである。2017年は堅調な経済環境下、3回の利上げが実現した。しかし、早すぎる利上げは景気後退を招くおそれがあり、債券や株式市場は大きな影響を受けてしまう。
実際、拙速な利上げは過去何度もグローバル金融市場での資金の逆回転を起こしてきた。FRBによる過去の利上げ期を見るとほとんど毎回といってよいほど、利上げ期の後期には10年金利が2年金利を下回る、いわゆる「逆イールド」現象を起こしてきた。そして、逆イールドが生じた数年以内に米国の景気後退期が発生している。2001年のITバブル崩壊や2008年のサブプライム危機は記憶に新しいだろう。1995年の利上げ期にも、逆イールドにこそならなかったものの10年と2年の金利差がゼロ程度まで低下し、メキシコやアジアでの通貨危機が生じていた。
現状、2年金利と10年金利の差はまだ60ベーシスポイント程度あり、すぐに逆イールドが発生する可能性は低いと考えている。現状FRBは2018年の利上げを3回想定しているが、2018年の米国経済成長率が2%台前半程度にとどまるのであれば、2回程度の利上げが望ましいだろう。
物価上昇率や賃金上昇率からみて、米国10年金利は2.5%程度までの上昇にとどまるとみている。米国2年金利は2%程度まで上昇するとみており、長短金利差は50ベーシスポイントと若干のフラット化にとどまることは景気後退を懸念するにはまだ早いだろう。しかし、米国の賃金上昇率や物価上昇率が十分に強くなる前に利上げを急いでしまうと逆イールドが生じ、それまでのグローバルマネーの動きが一気に変わってしまう。2018年2月にFRB議長に就任するジェローム・パウエル氏には慎重な舵取りが求められるだろう。
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