楽天が「携帯キャリア」に参戦できる深い理由 「菅官房長官に何度も迫っていた」との話も
ただおそらく楽天は、既存3社のように通信網を全国津々浦々張り巡らせようとはしないだろう。今回の電波割り当てでは、それを求めていないからだ。
総務省は今年11月、「第4世代移動通信システムの普及のための特定基地局の開設に関する指針案について」という資料を公表し、携帯キャリアに新たな周波数帯を割り当てる方針を示していた。2018年1~2月に開設計画の認定申請受け付けを行い、3月末には周波数の割り当てが決まる。
最低限満たすべき審査基準の一つが、人口カバー率で「8年後に80%」あるいは「5年後に50%」となること。業界関係者によれば、「面積のカバー率で50%はきついが、人口カバー率で50%なら人口が集中している東名阪エリア限定でも達成できる。80%なら東名阪に福岡や仙台といった地方の政令指定都市を数都市加えれば足りる」。
基地局建設だけじゃない多額の費用
今回割り当てられるのは、数ある周波数帯のうち1.7GHz(ギガヘルツ)帯で2枠、3.4GHz帯で2枠の計4枠だ。1.7GHz帯と3.4GHz帯では「スマートフォンの通信に使うのであれば、ほとんど差がない」(携帯基地局を受注している電機大手役員)。大きく異なるのは、今回対象の枠をすでに利用している者が別の周波数帯に移行するための移行費用だ。平たく言えば”引っ越し代”であり、これは新たに割り当てられる会社が支払わなければならない。
1.7GHz帯の場合、現在利用している防衛省に4.5GHz帯へ引っ越してもらうための移行費用が1950億〜2110億円かかる。一方、3.4GHz帯を利用するテレビ局等に5、6、7GHz帯に移行してもらう費用は110億〜620億円にすぎない。前者と後者でケタが1つ違うのは、防衛省の通信設備がすべて特注品であるためだ。後者はマラソン中継やピンマイクの無線通信に使用するもので、特注の設備ではないという。
また、1.7GHz帯の通信には既存の基地局が使える。大手3社にとっては追加の設備投資が少なくて済む。一方、3.4GHz帯の場合、大手3社は新規参入者と同様に、通信設備を新たに設置しなければならない。
周波数帯の割り当てが行われるたび、大手3社は必ずといっていいほど申請をしてきた。今回も3社が手を挙げる可能性は濃厚だ。通信帯域に余裕があるに越したことはないからだ。そのうえ各社とも年間1兆円前後の営業利益を計上するようになり、体力に余裕がある。実際、ドコモ、KDDI、ソフトバンクは3社とも「申請を検討中」とすでに表明している。
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