楽天が「携帯キャリア」に参戦できる深い理由 「菅官房長官に何度も迫っていた」との話も
今回の周波数帯の割り当てでは、同じ帯域に2社以上が申請した場合、「新規事業者と既存事業者が(審査で)同点の場合は新規事業者を優先」と、新規事業者を優遇することが明記されている。となると、楽天は1.7GHz帯と3.4GHz帯の両方に申請し、少なくともどちらかは割り当てられる確率が大きい。他社の申請状況次第では、どちらも割り当てられる可能性すらある。
問題は楽天に周波数帯が割り当てられた後だ。都市部に集中するとしても、「基地局を設置する場所自体が都市部にはあまり残されていない」(前出の電機大手役員)という物理的な問題が立ちはだかる。都市部ではマンションの屋上などに設置されているが、電源の確保が容易ではないほか、住民の賛同を集める必要がある。別の電機大手役員も、「当社に話は来ていないし、他社と協議しているという話も聞かない。(楽天は)本当に2019年にサービスが開始できるのか」と首をかしげる。
楽天に数兆円規模の投資は可能なのか
「2019年のサービス開始時までに2000億円、2025年までに最大6000億円」という設備投資のための資金調達額にも疑問の声は少なくない。大手3社は、4Gのネットワークに各社ともこれまで数兆円を投じてきた。これから投資を始める楽天が伍して戦えるとは考えにくい。
楽天側は「6000億円は(資金調達額であって、)投資総額というわけではない」と、実際は6000億円を大きく上回る可能性があることを示唆。先述の周波数帯移行費用の負担も小さくない。投資が膨らめば、それだけ回収も難しくなる。
「第4の通信事業者が出てくることは3社の協調的寡占(=3社の横並び)を打破するうえで歓迎すべきことだが、数兆円規模の設備投資を強いられればあまり儲からない可能性がある」と、野村総合研究所の北俊一上席コンサルタントは慎重に見る。
米アップルから最新型のiPhoneを供給してもらえるのか、という問題も立ちはだかる。「アップルは年間販売台数が1000万台を超える会社でないと供給しない」というのが業界関係者の一致した見方。楽天は「1500万人のユーザー獲得を目指す」としている。日本は毎年秋に発売されるiPhoneが年間販売の過半を占める特殊な市場だ。楽天は目標達成の期限を明確にしていないが、iPhone抜きでの1000万ユーザー到達は茨の道だろう。
国内外の通信業界に詳しい情報通信総合研究所の岸田重行上席主任研究員は、「海外ではかつて第4の事業者が出てくるように規制当局が誘導したことがある。競争を促進し市場の効率性を上げるためだったが、4社目の経営が苦しくなり、3社の牙城を崩すには至らなかった。巨大市場を誇る米国といえども4位のスプリントは苦戦している」としたうえで、「既存の大手3社と同じことをしていては立ち行かない。楽天はビジネスモデルを相当工夫せざるをえないのでは」と指摘する。
三木谷会長は、いったいどのような秘策を持っているのか。来年の申請受け付け、そして計画認定を経て、どういったプランが出てくるかに注目が集まりそうだ。
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