都内某「24時間保育園」のずさんな運営実態 電車で給食を運搬、勤務中に保育士が飲酒…
女性はまもなく目的の駅に到着し、電車を降りた。筆者も続いて降り、女性のあとを追った。改札を出てしばらく街並みを進むと、女性の姿は建物の中に消えていった。その建物には、保育園の看板が掲げられていた。
「給食を運んでいたのか?」謎の取引が思わぬ場所につながった。しかし、電車で給食を運ぶとは、一般の保育園では聞かない話である。
冬であればともかく、夏場の高温多湿の環境下で食品を安全に運ぶのは、衛生管理の観点から容易ではない。しかしこの保育園では、日常的にこうした給食の配送作業が行われていることが取材でわかった。
保育所の食事は「自園調理」が原則
保育所における食事の提供については、厚生労働省の「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」で自園調理が原則とされている。しかし、2010年から一定の条件を満たす場合に公私立問わず満3歳以上児には給食の「外部搬入」が可能となっている。
外部搬入で食事の提供を行う保育所は、厚生労働省の調査によると、調査対象となった約2万3000の認可保育所のうち2.4%に過ぎない(厚生労働省「保育所における食事の提供ガイドライン」)。9割以上が自園調理によって食事を提供しているのが現状だ。
外部搬入のルールに関しては、「運搬手段等について衛生上適切な措置がなされている」ほか、「栄養士から必要な配慮が行われる」「子どもの発達段階や健康状態に応じた食事の提供やアレルギー、アトピーへの配慮、必要な栄養素の確保等に応じることができる」ことなどが定められている(東京都福祉保健局の「東京都認証保育所事業実施要綱」)。
調べると、ここは認可外保育施設(無認可保育園)だった。しかし無認可だからといって上記のルールを無視していいわけではない。厚生労働省「認可外保育施設指導監督基準」では認可保育所同様の対応を求めている。
ただ、厚生労働省の子ども家庭局保育課に「電車で保育施設の食事を運搬すること」の可否について問い合わせたところ、「指導監督基準で衛生上の配慮をするよう定めているが、運搬方法について規定はない」との回答だった。
さらに、この地域を管轄する保健所に問い合わせると、「保健所は給食調理の届け出を受けているが、営業許可を出しているのではないため、あまり強い指導もできない」という答えが返ってきた。さらに「食品衛生法自体が性善説に立っているから」と、まるでいくらでもすり抜けられると認めたようなコメントもあった。電車での食事運搬という、食品衛生管理に不安のある保育所に対し、打つ手がないのが現状だ。
この無認可保育園を運営する株式会社(以下、A社とする)は、都内の繁華街に複数の保育園を運営しており、どの園も24時間365日体制だ。某ターミナル駅周辺にはA社の本部とされるマンションがあり、給食はその本部から運ばれていた。A社は日本語と英語と中国語のトリリンガル保育をうたっており、日本人と中国人の職員が常駐している。
筆者はA社の関係者から話を聞くことができた。すると、食事以外の問題も明らかになった。