都内某「24時間保育園」のずさんな運営実態 電車で給食を運搬、勤務中に保育士が飲酒…

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「中国人の先生が子どもを強く叩いて、指の跡が残るほどの傷になっていた」「個人情報が書かれた紙がゴミ袋に入れられて、園の玄関前に1週間近く放置されていた」「ウェブカメラで園内の様子が見られるが、保育室で夜、酒盛りが行われていた」というのである。こうした実態は保護者によって写真に撮られ、たびたび役所や児童相談所に報告されているが、抜本的な改善がなされたとはとても思えない状況だという。

保育園前に1週間近く放置されていた、個人情報が記載された紙のゴミ(写真:情報提供者撮影)

これらの問題に関し、筆者がA社に問い合わせたところ、中国人保育者による虐待と個人情報のゴミの件については「そのような事実はない」と否定。ただし、給食の電車による運搬と夜間の酒盛りについては認めた。

酒盛りについては「数年前にそのような事実はあったが、現場担当者の処分と代表取締役の報酬返還を行い、東京都福祉保健局へ報告している」という。また、給食については「保健所指導のもと運営している」というコメントが返されただけだった。

そもそも、外国籍の人が日本の保育園で働くことについては制限がある。まず、保育士資格は国籍を問わず受験が可能だ。外国籍であっても、就労制限のない「日本人の配偶者等」や在日韓国人などの「永住者」「永住者の配偶者等」、日系3世などの「定住者」であれば保育士として働いて何の問題もない。しかし、それ以外の外国人については事情が異なる。

日本では「出入国管理及び難民認定法」で外国人が就ける仕事が定められている。そして、その仕事に「保育士」は該当しない。つまり、保育園で働く外国人保育士は、永住者など「就労制限のない外国人」でない限り、不法就労にあたるのだ。

ただ、保育園の中には外国人に「保育士」としてではなく「語学教師」として申請させることで、就労ビザをとらせるケースもある。入国管理局がすべての保育所に立ち入り、勤務実態を調査をすることは現実的ではないため、見過ごされているのが現状だ。

夜勤ママの頼みの綱ではあるが…

繁華街では、24時間開いている保育施設が夜勤ママの頼みの綱になっているのも事実だ。夜の仕事をするシングルマザーだけでなく、自営業や官庁の職員など長時間労働を求められる家庭の子どもたちも多い。保育園のハシゴをする場合もあれば、24時間保育園に数日間預けたままにされてしまう子どももいる。

預けっぱなしが48時間以上に及ぶようなケースでは、園も児童相談所に相談せざるを得ない。しかし、現場の判断で「あそこのお母さんは2日くらい連絡取れなくても、3日目にはちゃんとおカネをもってやってくる」など相談を見合わせる場合もある。児童相談所や役所はこうした保育園の実態を知っていたとしても、虐待などより優先して対処すべき課題に追われ、手が回りきっていない現実がある。

また、利用している保護者からすれば、この保育園は繁華街で子どもを預けられる大事な施設。自分の子が在籍している間に大きな問題を起こさなければ、疑問を持ちつつも、利用を続けたいと考える保護者が大半ではないだろうか。

仕事に追われる保護者の窮状と行政の児童福祉の限界。それらを解決する24時間保育園は現代社会で必要な存在かもしれない。しかし、適切な運営が前提であることを忘れてはならない。当然ながら、子どもたちの命をただ預かればいいのではない。保育の受け皿を拡大しながら、保育の質を担保することが不可欠だ。そのためには、行政による指導・監督機能の強化が求められる。

大川 えみる 保育ライター
おおかわ えみる / Emiru Okawa

西日本の民間認可保育園の元園長。保育士・幼稚園教諭を養成する短大・大学の講師を歴任。園長と教員の経験をもとに、保育現場から社会の動向を読み解く。「保育士給与増額署名」呼びかけ人。日本保育学会、日本乳幼児教育学会会員。各地で就職セミナー、保育者研修なども行う。著書に『ブラック化する保育』(かもがわ出版)、教材DVDに『事例で学ぶ!保育トラブル111分完全密着解決マニュアル』『保育のブラック化をこえて』(ともに医療情報研究所)などがある。公式ブログ「大川えみるの保育日誌」

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