ソニーは「電子書籍3位」から巻き返せるか 結局のところ、強みはハード

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新しいリーダーストアでは読者が自分の書店を作ることができる

2つ目がリーダーストアを9月24日付けで刷新したことだ。総合書店としての魅力を高めるだけでなく、個人が自分の好みの本を並べて販売する専門店を運営できるようにするなど、「読者参加型ストア」とした。3つ目はiOS端末でもリーダーストアで購入したデータを読めるようにしたこと。昨年12月にソニー以外のアンドロイド端末に対応したのに続いて、オープン化をいっそう進めたことになる(10月中旬の開始時にiOS端末で読むことができるのはEPUB3形式のコミックと雑誌のみ。その後、EPUB3形式の書籍も追加予定)。

同じオープン化を行うのであれば・・・・・

しかし、残念ながら3つのポイントとも、それほどパンチがない印象がある。競合であるアマゾンの強みは、紙の書籍と電子書籍を併売していること。電子化されていない書籍であれば紙の本を購入すればいい。また他の買い物のためもあってクレジットカード番号を登録しているユーザーが多く、決済の手間が掛からない。もちろん、キンドルが強いことはソニーも認めている。「キンドルは抜きんでている。短時間でアマゾンを抜けるとは思っていない」とソニーマーケティングのデジタルリーディングビジネス部・佐藤淳統括部長は言う。

とはいえ比較的、パンチがあるのがハードウエアだ。端末下部の物理ボタンを使用することによりサクサク片手でページをめくれる点は、キンドルやコボにはない強みといえる。リーダーストアのオープン化を進めるだけでなく、端末のオープン化も進め、キンドルストアで書籍を購入できるようにすれば、より売れるようになることは間違いない。

その点を佐藤統括部長に聞いてみると「他のストアとの連携ということでは、紀伊国屋の電子書籍書店とは連携しており、リーダーストアだけに対応しているわけではない。ただアマゾンとの提携の可能性については何のコメントもできない」とのことだった。もちろんデータ形式の違いなど、解決しなければならない課題はあるものの、「ストアのオープン化」だけでなく、「ハードのオープン化」も大胆に進めれば、生き残りの道が見えてくるかもしれない。
 

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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