苦戦続くフジテレビに見えた「意外な活路」 キー局の中で唯一、営業赤字だが…

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意地を見せたフジテレビ(c)朝日新聞社

テレビ業界の“凋落の象徴”とされているのがフジテレビだろう。2017年4~9月期決算では、ホールディングスの中核事業であるフジテレビジョンがキー局の中で唯一、営業赤字となった。「めちゃ×2イケてるッ!」や「とんねるずのみなさんのおかげでした」といった長寿番組も来春に終了することもあり、世間の厳しい目にさらされている。

フジテレビの映画部門がヒットを生み出している

当記事は、AERA dot.の提供記事です

しかし、業界関係者の見方はいささか異なるようだ。2017年を振り返ると、実は邦画界ではフジテレビの映画部門がヒットを生み出しているからだ。

「『踊る大捜査線 THE MOVIE』などの映画シリーズが大ヒットしたフジテレビは、2000年代半ば頃から、映画の制作に力をいれてきました。昨今の邦画では、テレビ局が映画の『製作委員会』に入り制作や宣伝を担うケースが主流となっていますが、こうした流れを作ったのもフジテレビです」(民放ドラマ制作スタッフ)

ざっと調べてみると、3月公開の『ひるなかの流星』(13億円)をはじめ、主演の菅田将暉ほかイケメンたちが活躍する『帝一の國』(4月公開/19億円)、上戸彩主演の『昼顔』(6月公開/23億円)、是枝裕和が監督、福山雅治主演という強力タッグの『三度目の殺人』(9月公開/14億円)、今最も数字を取ると言われる新垣結衣が主演の『ミックス。』も14億円を突破している。

「今年は2016年に比べると話題作に乏しく“邦画の凋落”とさえいわれていましたが、フジテレビはコンスタントに数字を出しています。どれも、大ヒットというほどの数字ではないですが、オリジナル作品やテレビドラマから独立した、オリジナル作品も制作しています」(映画雑誌の編集者)

また、洋画の話題作に注目が集まっている中で、海外の配給との業務提携も功を奏している。同社は米イルミネーション・エンターテインメントと提携し、『怪盗グルーのミニオン大脱走』(東宝東和)がシリーズ最高の興行収入73億円、またCGアニメ映画『SING/シング』(東宝東和)も51億円となった。

「『昼顔』など主婦層をターゲットにしたドラマの映画化で、『誰がわざわざお金を払ってまで見るんだ?』と思われていましたが、蓋を開けてみたら予想外のヒットでした。やはり、視聴率が下がったと言っても、テレビでの宣伝効果は絶大です。亀山千広前社長の肝いりで作られた映画局が、テレビの制作チームとかなり綿密なタッグを組んで宣伝施策を検討しているそうです」(前出の民放ドラマ制作スタッフ)

今年は「北九州連続監禁殺人事件の犯人の息子」にインタビュー取材を敢行した「ザ・ノンフィクションSP 人殺しの息子と呼ばれて」を放送するなど、コンテンツ面でも気概を見せたフジテレビ。長寿バラエティーが終了し、どう刷新していくか注目が集まっている。来年以降の“再生”はあるのか。

(ライター・今市新之助)

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