赤い京急電鉄に突如現れた「白い電車」の正体 ステンレス電車を「わざわざ塗った」狙い

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金沢八景駅に停車する「白い電車」。鉄道ファンや利用者の注目を集めていた(記者撮影)

その理由について、京急の広報担当者は「京急といえばやっぱり『赤と白』というイメージを大切にしたかったため」と説明する。車両担当者によると、ステンレス車両に全面塗装を施したいという話は以前からあり、検討が具体化したのは2年ほど前からという。

だが、塗装を施すことで「手間は相当かかりますね」と車両担当者。現在、京急で全面塗装を行っている車両はアルミや鋼鉄製だが、塗料は「若干だが、アルミや鉄のほうがステンレスより塗りやすいと言われている」といい、単に工程が増えるという以上の手間がありそうだ。また、塗装することでコスト面についても1両あたり数百万円増えるという。

手間が増えても「らしさ」を

塗装ではなく、ラッピングでもほぼ全体を赤と白に仕上げた例はある。2016年に登場した新1000形の「1800番台」と「16次車」は従来よりもラッピングの面積を拡大して、ほぼ全体を赤と白のフィルムで覆った。

真っ白に塗られた車両の側面。ドア部分は「赤い塗装が間に合った」といい、下半分だけ赤く塗られている(記者撮影)

それでも今回、全面塗装に切り替えた理由について、車両担当者は「ラッピングだと赤の仕上がりが若干異なり、塗装と比べるとつやなどがだいぶ変わってくるため」と説明する。また、ラッピングは「曲面や凹凸部分が難しい」といい、全体をラッピングした車両でも窓枠やドアのふちなどは銀色が露出していた。このような部分も含めて全面的に色を付けたかったのも理由だという。

「手間やコストが増えても『京急らしさ』を求めたい」と広報担当者は話す。従来のステンレス車両を全面塗装にする計画はないものの、2018年度以降に導入する新1000形についても、今回と同様に全面塗装とする予定だ。

首都圏の通勤電車はステンレス製やアルミ製の銀色の電車が大半となった中、近年は全体に「色」のある電車も再び増えつつある。車体を黄色にラッピングした東京メトロ銀座線や、ブランドイメージ向上のため車体の色をネイビーブルーに変更しつつある相模鉄道などがその例だ。京王電鉄や東急電鉄東横線を走る、かつての緑色一色の車両を復刻したラッピング車両も、鉄道ファンだけでなく一般利用者の注目を集めている。

単なる移動の道具と思われがちな通勤電車だが、実はその色や雰囲気に親しみや愛着を感じている利用者は多いだろう。銀色の電車が増えた今、鉄道会社のイメージづくりにとって、「電車の色」の重要性は高まっているのかもしれない。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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