FRBの自信喪失、変心にご用心 金利上昇の影響はおそらく限定的

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9月の連邦公開市場委員会(FOMC)は、筆者を含め大方の予想を裏切り、QE3(大規模な証券の購入による金融緩和策)の縮小を見送ることで、事実上の追加緩和を行った。さらに新たに公表した2016年末の政策金利見通しが、FF金利先物に織り込まれた予想値よりも低かったことを通じ、金利政策の時間軸が(ガイダンスの変更なしで)強化されたことも、「様子見」という名の追加緩和の効果を高めることになった。

次期FRB議長候補だった、サマーズ元財務長官も辞退。FOMC運営はますます難しくなっている

振り返ってみれば、すでに7月の会合で多くの参加者が「景気の回復が続くという自信が6月会合時よりも弱まっている」と吐露していた。その後9月の会合までに発表された経済指標も、ほぼ一貫して事前の市場予想を下回ってきた。据え置きを決めたFOMCの慎重さの背景は、このように説明できるだろう。

バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長は、兎にも角にも「成長、雇用、物価の3点セットの見通しが良くなるという証拠」(“Three-part test”)を集めたいのだと、FOMC後の記者会見で繰り返した。前号で筆者が指摘した金融システムの安定性、つまりバブルへの警戒は、横に置かれた格好だ。

自らの失敗が招いた金利上昇への懸念

ただFOMCの自信を曇らせたのは、単に指標が下ぶれたという理由だけではない。もっとも重要な理由は、家計のバランスシート調整の進展にとって欠かせない住宅市場の回復を、自らのコミュニケーション政策の失敗が招いた金利上昇によって阻害してしまうというリスクである。住宅部門は伝統的に金利感応度が高く、FOMCの懸念は正しいだろう。

しかし筆者は、現在の米国の住宅市場が、賃貸需要とそれを支える投資家による賃貸住宅の供給という構造を持ち、すでに逼迫状態にあることに注目している。そして、この2つの要因によって、米国の住宅市場は従来と比べて金利上昇に対する“耐性”を強めているのではないかと考えている。

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