FRBの自信喪失、変心にご用心 金利上昇の影響はおそらく限定的

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最後に、筆者の仮説が間違いで、FOMCが懸念するように金利上昇の影響が住宅部門や他のセクターに広がる場合、何が起きるだろう。FOMCは、自らの政策が引き起こす長期金利の一段の上昇を恐れ、出口を見失うだろう。米国の金融緩和は終わりなきパーティになりかねない。

出口に踏み出し損ねれば、真のバブルが始まる

果たしてこれが世界経済、とりわけ新興国経済にとってプラスに寄与するのかどうかは怪しい。株価や為替相場からは、据え置きを決めた9月FOMCを受けて新興国市場に再び資金が流れ込む様子がうかがえる。しかし経常赤字問題や不動産バブルなど、一部の新興国では経済のファンダメンタルズに問題があるという事実は変わっていない。

筆者には、FOMCが出口に踏み出し損ねることこそが、真のバブルの起点に思えてならない。バーナンキ議長は、5月以降の長期金利の上昇によってリスクのあるポジションが解消されたと説明しているが、ガスが抜けたように思われるときこそが危ういのではないか。今回のFOMCを後に振り返り、「Regret, I have many」などと言わないで済むことを祈るばかりだ。 (撮影:ロバート・スペンサー)

(筆者注)
「Regret, I have many」:バーナンキ議長が記者会見でフランク・シナトラの「My way」の歌詞をもじって言った言葉「Well, on regrets, as Frank Sinatra says, I have many」からの引用。本来の歌詞は「Regrets, I've had a few」(後悔も少しある)というものだが、バーナンキ議長は金融危機から5周年を迎えたことについて尋ねられ、上述のように「後悔ばかりだ」と答えた。
小野 亮 みずほリサーチ&テクノロジーズ プリンシパル

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おの まこと / Makoto Ono

1990年東京大学工学部卒、富士総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社。1998年10月から2003年2月までニューヨーク事務所駐在。帰国後、経済調査部。2008年4月から市場調査部で米国経済・金融政策を担当後、欧米経済・金融総括。2021年4月より調査部プリンシパル。FRB(米国連邦準備制度理事会)ウォッチャーとして知られる。

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