「情熱大陸」に夢中な人も知らない泥臭い裏側 放送20年の長寿番組が支持され続けるワケ

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たとえば、「この人にこういう場所で話を聞きたい」「あのコメントにはこんな思いが込められているのではないか」というディレクターの意図が効果的に組み込まれているのが同番組の特徴。そこには報道ドキュメンタリーのような中立さはなく、対象者に寄り添うスタンスだからこそ、私たち視聴者は彼らに引かれるのでしょう。もちろん、その演出に過度な誇張やうそはなく、あくまで視聴者目線を踏まえて行われているため、「感情を誘導されているのでは?」と違和感を覚えることがないのです。

ビジネスパーソンへのオファーは?

あなたがビジネスパーソンとして自信を持っているのなら、「もし『情熱大陸』に出たら……」、あるいは「出られるかな?」と考えたことはないでしょうか。同番組の出演者は、芸能人、アスリート、アーティストなどの有名人ばかりではないだけに、チャンスは十分あるはずです。その人選はどのように行われているのでしょうか。

福岡元啓(ふくおか もとひろ)/1974年東京都出身。早稲田大学卒業後1998年毎日放送入社、ラジオ局ディレクターとして『MBSヤングタウン』を制作後、報道局へ配属。2006年東京支社へ転勤。2010年秋より『情熱大陸』5代目プロデューサーに就任し、ギャラクシー月間賞、ドイツ・ワールドメディアフェスティバル金賞、2015年ニューヨーク・フェスティバル2015ドキュメンタリー人物・伝記部門入賞など多数受賞。

「制作会社や局内から企画を募っているほか、『出たい』と言ってくださる人もいますし、プロデューサー自身が興味ある人にアプローチもします。『単に、この人を見てほしい』ときもあれば、『今、この人を見せるしかない』ときもありますし、いろいろな人物がいる中で大切なのは、どうバランスよくラインナップしていくか」(福岡さん)

「旬の人」という観点から選ばれたのは、11月26日放送の女優・菜々緒さん。「ドラマやCMで悪女キャラを確立した彼女が、プライベートではどんな素顔を見せるのか」、気になる視聴者が多いことをくんでの起用でした。

一方、「社会性の高い人」という観点から選ばれたのは、4月9日放送のテキスタイルデザイナー・森本喜久男さん。70歳で余命わずかの状態だった森本さんは、高齢化が進む日本社会で、どう生きていくのか。日本中の人々に当てはまる広く深いテーマ性を感じさせました。

そして、気になるビジネスパーソンについて。「『情熱大陸』は『ガイアの夜明け』(テレビ東京系)のようなビジネスの内容ではなく、人の生き方に焦点を当てるので、経営者というのはいちばん通しにくい企画かもしれません。ただ、番組としては『社会とのコミットが広いものをやりたい』という気持ちがあって、たとえば2015年2月8日の放送で、社会起業家の向田麻衣さんに出演してもらいました」(福岡さん)

向田さんの活動は、「ネパールで暴行被害などに遭った女性にメークをして笑顔と尊厳を取り戻してもらう」というもの。彼女ほどでなくても、社会性の高い事業をしているビジネスパーソンは、出演のチャンスがあるかもしれません。

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