うつ社員を多く出す会社ができていない基本

産業医の力を借り、初期のサインに気づこう

事例性とは「遅刻をする」「職場で大声を出す」「返事をしない」「上司や同僚とのコミュニケーションがとれない」など業務中の客観的な不適切行動を指したり、そのため職場関係者が困惑したりする状況や事実をいいます。

とはいえ、産業医がいれば万事解決というわけではもちろんありません。大手企業のように専属で産業医がついている場合を除き、多くの中小企業では産業医は嘱託の形態をとります。嘱託産業医は月1回程度の職場巡視と、衛生委員会への参加、過重労働者や高ストレス者への1~2時間の面談が基本的に企業との接点となります。また、産業医の選任義務を持たない企業もあります。

実はA社にもB社にも産業医はいました。しかし、「名義貸し」状態であったり、法に決められた通りのことをやるだけで形骸化してしまっていたりで、機能していなかったのです。

さらに、中には企業側の意向に偏った、中立を守れていない産業医も残念ながら存在します。そのような産業医では、不調者も相談しにくい状況になり、結果根本的な解決はできません。企業は、自社のメンタルヘルス対策に向き合って、共に解決策を講じてくれる産業医をしっかり選ぶ必要があるでしょう。

産業医の力を借りることに加えて、企業としてメンタルヘルス対策を整えるために、どのような仕組みが必要になるのでしょうか。山越さんはこう指摘します。

メンタルヘルス対策を整えるには

「メンタルヘルス対策がうまく機能している企業は、メンタル不調の初期のちょっとしたサインに気づける仕組みがあります。労働者にとって一番身近なのはその上司。上司が部下のメンタルヘルスの少しの変化に気づけるよう、密なコミュニケーションがとれていることが重要です。そして企業も上司個々のマネジメント資質に頼ることなく、研修などで教育していくべきでしょう。

それでもメンタル不調者をゼロにすることは難しいことだと思います。ゼロを目指すのではなく、不調者が現れたときの対応の適切さも重要になりますね。たとえば不調の原因が配置部門のミスマッチにあったとき、柔軟に人員の配置替えができる体制であること。これもメンタルヘルス対策が正しく機能している企業の特徴です」

企業が主体的に問題意識を持ち、解決に向けて行動できること。さらには不調者個人への個別対応で終わらせず、今後同様の不調者を増やさないように職場環境改善、全体の体制づくりにも意識を向けること。メンタルヘルス対策がうまくいっている企業の共通点にはこのようなものがあります。

たとえ入り口は「労働基準監督署に指摘されたから」「法律上やらなければいけない」といった理由でも、進めていくうちに「自社の従業員の健康を守りたい」「生き生きした企業風土にしたい」と前向きな改革を目指すようになっていきます。

メンタルヘルス対策を行い、職場環境を改善することは、労働者の健康に寄与するだけでなく、企業にとってもリスク回避やブランディングに結び付きます。企業の一「戦略」ととらえる必要があるでしょう。

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