北海道庁が目論む「観光列車」に足りないもの JR北海道は観光用車両を新造するべきか?

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観光列車を地方創生に活用したい。北浜駅前で太鼓を披露してくれた白鳥台小学校の生徒たち(右)と、ABASHIRIバルプロジェクトPRのために列車に同乗した観光大使「流氷パタラ」(左)(ともに筆者撮影)

この動きは、単なる観光列車のツアーではなく、地方創生の一環と位置づけられよう。札幌圏はもちろんのこと、国内から訪日外国人までを対象とした旅行者に、ゆったりとした観光列車に乗ってもらって、北海道の景色を楽しんでもらう。その行く先々では、その土地ならではの飲食や体験ができる。その結果、ツアー参加者が喜ぶのはもちろんのこと、鉄道の必要性が認識され、さらに沿線各地に観光収入をもたらすことになる。

この好循環が生まれたならば、ともすると鉄道に将来はないとして廃線を前提としがちなJR北海道問題に対して、いかにして存続させるかという議論に変わってくることが期待される。

この点について、道の事業の座長を務める北海道大学の吉見宏教授は、次のように指摘した。

「JR北海道の財務状況を考えたとき、北海道は車両保有の母体の枠組み自体を考えるべきである。ただし、運行・整備・乗務員等はJR北海道に委託する。車両を保有しつつ、実際の運行を鉄道会社に委託するケースは『東武博物館』が動態保存する8111編成を東武鉄道が運行している例がある。この前例が参考になるであろう」
「また、利益が出ないからと廃止するのではなく、鉄道を道道と同じように位置づけた上下分離を行う。その線路や施設は、北海道の企業や第三セクターなどが所有し、列車の運行等についてはJR北海道が担当するのだ。そのうえで観光列車を走らせれば、JR北海道の収支改善を図ることができるだけでなく、観光振興と地方創生の両面にも役立つはずである」

観光鉄道への脱皮促進を

これらの関係者の展望を基にした筆者の考えでは、道は近い将来に、観光列車用のリゾート車両を数両新製することが望ましいと思う。単独運行とともに定期列車への連結も可能な気動車とすることで、バス1台分のツアーの場合には、定期列車の先頭か最後部に1両だけ増結するといったこともできよう。ツアーがないときには、JR北海道が借りて定期列車に増結し、特別車両として割増料金で運転することもできるのではないか。この方式が軌道に乗るようなら、同仕様の車両を需要に応じて1両ずつ増備する手もあろう。

ともすれば、悲観的な観測が主流となりがちなJR北海道だが、北海道観光列車モニターツアーに参加し、関係者の構想を聞いた結果、将来展望に対する確かな手応えを感じた。一筋縄ではいかない案件であることは間違いないが、一方で、観光における北海道ブランドは、日本全国の観光関係者の誰もがうらやむ超優良ブランドであることも事実だ。

ぜひ、この先も関係者の英知を結集して、JR北海道路線の公共交通から観光鉄道への脱皮を促進してほしい。

伊藤 博康 鉄道フォーラム代表

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いとう ひろやす / Hiroyasu Ito

1958年愛知県生まれ。大学卒業後に10年間のサラリーマン生活を経て、パソコン通信NIFTY-Serveで鉄道フォーラムの運営をするために脱サラ。1998年に(有)鉄道フォーラムを立ち上げて代表取締役に就任。2007年にニフティ(株)がフォーラムサービスから撤退したため、独自サーバを立ち上げて鉄道フォーラムのサービスを継続中。鉄道写真の撮影や執筆なども行う。

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