北海道庁が目論む「観光列車」に足りないもの JR北海道は観光用車両を新造するべきか?

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北海道観光列車モニターツアーを主催する日本旅行北海道の責任者である、永山茂地方創生推進室長に今後の展望を聞くと、今年度は3回5コースを実施するが、来年度はコースを絞ったうえで、四季折々に走らせたいという。一連のモニターツアーの結果を反映させた、より完成度の高いツアーにしていきたいと考えている様子だ。

しかし、それを実現するには、現状のやり方では限界も感じるという。その最たるものは、道の年度予算だ。毎年競争入札により受託業者が決まるのだが、年度予算の関係で新年度に入ってからの公告となり、選定結果は今年度と同様に5月下旬となってしまう。そこから企画を進めると、JR北海道や立ち寄り先との調整と並行してパンフレットの作成もあるため、急いでもツアー募集と実施が秋以降になってしまう。つまり、北海道の観光シーズンである夏場に催行できないのだ。

丸瀬布を走る蒸気機関車。雪中の走行は迫力があるが、森林浴に訪れる地だけにツアーでも運転レギュラーシーズンである夏場に訪れたい(筆者撮影)

実際、今回筆者が参加したツアーでも、2日目の900草原と渡辺体験牧場は雪の中だったし、3日目の丸瀬布も同様だった。丸瀬布では新雪の中を蒸気機関車「雨宮21号」が走る姿を見ることができ、結果オーライとはなったものの、本来はすでに今シーズンの運行を終えていて、このツアーのために特別に走らせてくれたものだった。

さらに、急いで売り出しても晩秋からとなった今回のツアーですら、JR北海道から提示された運行スケジュールについて精査する余裕がなかったという。単線区間がほとんどのJR北海道の路線だけに、停車時間の調整は簡単ではない。それだけに、観光先と停車時間・回送時間について精査して、さらに調整してこそ完成度の高いツアーが出来上がるのだ。その点でも年度予算という障壁は、厄介なものだ。複数年度契約が検討されてもよかろう。

個人旅行にも生かせるツアーを

一方、将来構想は、なかなかユニークだ。観光列車用の車両を準備したうえで、今回のようなパッケージツアーとともに、ツアーのバラ売りもしたいという。たとえば3日間のツアーの場合、初日だけ、2日目だけといったように、特定の日だけに参加できるようにして、個人旅行の内容充実に役立てるようにしたいというのだ。

さらに永山氏は、地域ごとに特色ある仕組みを作ることで、各地域の魅力を引き出し、結果としてその地元におカネが落ちる形を確立したいという。初回のモニターツアーで寄った名寄(なよろ)駅では、隣町の士別(しべつ)との「ジンギスカン対決」をしている。名寄は煮込みジンギスカン、士別は地場産のサフォーク種という人気のラム肉を使用した焼きジンギスカンと、隣町でありながら食べ方が大きく違っている。その食べ比べは、ツアーを組めば楽しめるように、地元ですでにノウハウが確立されているという。

このような、その土地ならではの仕組みを各地に作り、それらを巡る旅を作っていきたいとのことだ。

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