フランス人が驚く日本人の英語への「恐怖感」 社会的なプレッシャーがすごすぎないか
そのノリで日本に旅行に行くと、たいていのフランス人は言葉の壁にぶつかって絶望する。フランス人がよく言うのは「たくさんの日本人と触れ合いたかったのに、言葉の壁のせいでほとんどかかわれなかった」という話だ。
正直なところ、フランス人もそれほど英語は上手ではない。英語はフランス語と同じ単語や語源が多く、日本人に比べれば有利かもしれないが、フランス語なまりのせいで片言の英語しかしゃべれない人が多い。パリを訪れた日本人が「フランス人はフランス語に誇りを持っているから英語をしゃべりたがらない」と言うのを何度も聞いたことがある。しかし本当のところは、英語がうまくしゃべれない人が多いのも事実である。
仕事のキャリアや海外旅行のために、英語は絶対に身に付けたほうがいいというプレッシャーは、フランスの社会や学校にも存在する。しかし、個人レベルでは、日本人ほどのプレッシャーはない。外国人が目の前にいて、英語が話せなくてもフランス人はあまり恥ずかしいと感じないからである。
英語ができるようになった意外なきっかけ
私が、英語が話せるようになったきっかけは、高校に入る前の夏に家族で行ったアメリカ旅行だ。フランスの夏休みは長い。私の親は1カ月間、レンタカーでアメリカを周る計画を立てた。当時の私は、反抗期の真っ最中。家族と一緒にいることが苦痛だった。しかも、1台の車でぎゅうぎゅう詰めになってアメリカのあちこちを走るのは、想像するだけで耐えがたいものがあった。そんなモヤモヤした気持ちのまま、フランスを発った。
ところが、ロサンゼルスの空港に着いた途端、1つのアイデアが自分の中で生まれた。それは、「どうせここに1カ月間いなきゃいけないから、英語でも勉強しよう」というものだった。それまで英語は学校のクラスで平均レベルの生徒だった。ロスに着いてすぐ、親に頼んで、若者向けの雑誌を3、4冊買ってもらった。そして、旅の車の中でひたすらそれを読んだ。
最初はほとんど意味がわからなかった。しかし、ほかにやることもないので、何度も同じ記事を読みながら「この言葉はどういう意味なんだろう」とか「この言葉はさっきも見たな」と、まるで探偵ゲームのようなことをしていた。そうしているうちに不思議と楽しくなり、片言の英語しか話せない親に代わって、旅の先々で通訳を自ら買って出た。親ができないことをすることで、少し大人になれた気がした。
フランスに帰ってきてからも、語学のウイルスに感染したかのように、毎晩、英語の辞書を開いて、アメリカ旅行で買った雑誌を訳し続けた。次の年の夏には、アメリカにホームステイした。そして、高校を卒業する頃には、英語がかなり話せるようになっていた。私の英語は、退屈から始まった。退屈のパワーは軽視できない。
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