1口1万円、「小口不動産投資」で何が変わるか 新興企業トップにロングインタビュー

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村上:コーポレートファンディングでキャッシュフローを回しつつ、将来に向けてクラウドファンディング事業に投資をしているのだと思いますが、この両輪は資金的にうまく回せる仕組みになっているんですか?

岩野:ここは大事なところなんですが、われわれ自身、リーマンショック時など、過去に痛い目に遭っています。だからこそ、その手当が必要でして、たとえばですが、ファイナンスを長期に引くことなんです。どうして不動産会社はマーケットが悪くなると潰れるかというと、ファイナンスが短期だからなんです。銀行さんによっては、短期の貸付でも「絶対にロール(返済期日に新たな貸付を行い、実質的に貸付を延長すること)します」と口約束するんですが、マーケットが壊れてしまったら、なかなかその口約束は果たされません。そういう経験をしてきているからこそ、なるべく長期で手当てしていただくようお願いしました。去年末時点で、加重平均で27年くらいに長期化できています。

村上:27年とはかなりの長期化に成功されていますね。相当タフに銀行と交渉されたと想像します。ほかに財務的に意識されているポイントは?

岩野:物件のほとんどを東京のものにしています。これはマーケットが大きく下落する局面になってもつねに一定の取引量があり、最後まで流動性が残るのが東京エリア案件だからです。そういうリスク管理を取ったうえで、さらにクラウドファンディングによる資金調達はバックストップのさらにバックストップに位置づけようと考えています。

これはリーマンショックを経ての教訓ですが、リーマンショック後も個人でおカネを持っている人はいて、不動産をさらに買いたいとおっしゃる人はいたんです。ただ、ディールへのアクセス手段がなかったために、そうした方々の資金は流入しませんでした。それが結果的に更なる不動産不況を誘発したとも言えます。

クラウドファンディングというインフラ作りをしておけば、マーケットがクラッシュしたときこそ投資をしたいという個人にも不動産投資の道筋が開かれていて、また物件を取得したい不動産会社も個人のおカネを受け入れることができ、Win-Winとなります。また、そうすることによって不動産取引量はある程度保たれ、マーケットも大きく崩れにくくなるだろうと思うんです。そういう仕組みをもったマーケットを作っていくことが、不動産市場の発展や公正化につながるとわれわれは考えています。

少額でも時間をかけて積み上がる力こそ

村上:上場時のバリュエーションや、今の株価水準についてお考えを聞かせてください。一見すると「普通の不動産投資業の会社」ととらえられてしまいかねませんし、厳しい評価を受けてしまう可能性もあったと思うのですが。

岩野:上場時の主な受け皿である個人投資家の方は、クラウドファンディングの可能性を感じている方が多いのかなと思います。機関投資家の方にしてみたら、クラウドファンディングが広がるということは、自分たちの仕事が減るというのと同義ですからね。

クラウドファンディングの可能性を不動産会社の観点から述べると、資金の調達を自分たちでコントロールできる不動産会社は非常に強いという点が挙げられます。過去を見ても、事業基盤が強かったのは銀行が隣にいる不動産会社ですよ。資金の蛇口を握っている不動産会社はどの時代でも強いんです。われわれは独立系で銀行さんからの支援はそんなに受けられないですが、自分なりの蛇口を持つことができれば、圧倒的に他の不動産会社とは差別化できるはずです。

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