「007」地下鉄アクション撮影の秘密を追え! ロンドンの「聖地巡礼」はこんなにスゴい

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換気ダクトからノーザン線のプラットホームを見下ろす。探検ツアーで訪れるのは、どこも非日常の場所ばかりだ(筆者撮影)

2つあるトンネルのうち、もう片方はノーザン線の換気用に作られたトンネルで、先まで進んでいくと、同線のプラットホームの真上に出た。反対側へ進んでいくと、今度は頭上に薄明かりが見えた。これは土砂を運び出すために設けられた竪穴で、現在は換気用として使われている。ここも映画に登場しており、ハッキングによって留置所の鍵を開けたシルヴァが地下へ逃げ込み、ボンドが追っていくというシーンで使われた場所だ。

換気ダクトから乗り換え用連絡通路への出口。映画を見た人なら、ジェームス・ボンドがこの扉を出て行くシーンを覚えている人もいるだろう(筆者撮影)

トンネルから外へ出て、さらにもう1つのトンネルへと潜入する。こちらも元々は工事用に掘られたもので、有名なトラファルガー広場の直下になるという。

このトンネルも、ボンドが追跡するシーンの一部で使われているのを映画の中で確認できる。そのトンネルから扉を出ると、駅の乗り換え用連絡通路の途中に出るが、そこもまさにボンドが通路へ出てきたシーンに使われた場所だった。約1時間半の見学時間は、まるで映画の中に吸い込まれたかのように感じるほど、そこかしこに撮影現場が点在していた。

ツアーの回数を増やせないか

今回の廃駅ツアーは、もちろん駅そのものの歴史や変遷という部分においても非常に興味深い内容だったが、同駅を使用し撮影した作品ということもあって、最初から最後まで『スカイフォール』尽くしだったと言えるかもしれない。そういう意味で、映画を観たことがあるファンの人にとっては、大興奮の探検ツアーと言えるし、このツアーに参加するのであれば、事前に映画をチェックしておけば、楽しみも倍増するだろう。

日本では近年、映画やアニメ作品の舞台となった駅やその周辺地域などへ「聖地巡礼」として多くのファンが訪れ、町おこしのきっかけとなったケースもある。一方、ロンドンでは長い歴史を刻むトンネルなどの遺構をどのように保存し活用していくか、という点が焦点となっており、今回のようなツアーも広く一般にその存在を知ってもらうことが趣旨で、交通局は経済効果を期待しているわけではない。実際、こうしたイベントの多くは、交通局職員やボランティアガイドによって支えられている。

幅広くこうした遺構の存在を知らせるためにも、ぜひ定期的にこのようなガイドツアーを開催してほしい……と思うわけだが、狭く立ち入りの制限された場所を訪れるイベントは、セキュリティ面を考えるとなかなか難しく、人数や日程の制限は仕方のないことだ。年に数日しかチャンスがないうえに、発売と同時に予約しなければチケット入手も困難なこのツアー、もう少し開催頻度を増やすことができないものだろうか……。

取材協力/Special Thanks:Transport for London(TfL)/ London Transport Museum

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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