ミスター社会人に学ぶ、40歳超でも輝く術 後悔をモチベーションに変えるパワー

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新記録に王手

09年の都市対抗では通算13号本塁打を放ち、4番打者としてホンダを優勝に導いた。その打棒はもちろん、西郷の姿勢がチームにいい流れを呼び込んだと安藤は言う。

「西郷はこれぞ社会人というお手本。走るにしろ、打つにしろ、意図が伝わってくる。守りでも攻撃でも、体を張っています。年齢が上の選手から若手まで、西郷の姿を見てまとまりました」

12年大会でタイ記録に並ぶ通算14本塁打を放ち、新記録に王手をかけた。記録はあくまで記録と位置づけるが、モチベーションになっている。

「安藤監督に『ホンダのユニフォームで記録を達成しろ』という言葉をもらって、ここに来ているので。何とか約束を果たせるようにと思っていますね」

10年限りで安藤がチームを去り、長谷川寿がチームを引き就いたが、西郷は4番を任されている。13年の都市対抗は初戦で敗れたものの、まだまだ勝利への欲は尽きない。

「これだけ長くやらせてもらって、チームが勝つ喜びを知っています。その喜びを1度知ったら、また味わいたいと思って目指しますね。若い選手にも、そういう気持ちを味わってもらいたい」

監督やコーチとして若手を指導する立場もあるが、現在の西郷にその選択肢はないという。

「チームメイトとして、何とか優勝するための力になりたい。生涯現役? まあ、許されるのであれば(笑)。でも、チームの役に立てなかったら意味がないので、何とかそうなりたいですね。周りから見て、『もう、やめればいいじゃん』と思う人はいっぱいいると思うんですよ。別に、それはしょうがない。でも、自分からあきらめる気にはなっていませんね。体が動くうちはやり続けたい。野球をできなくなった場合、またやりたくなることはわかっているから、やり切りたいですね」

過去の悔恨は、決して消すことができない。だが、後悔をモチベーションに変えることができれば、計り知れないパワーになる。

“ミスター社会人”の野球人生が、そう教えている。

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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