上越新幹線「秘密兵器」で鈍足を返上できるか E7系試験車両の屋根に設置された「あの物体」
最高速度の引き上げは、単に性能のよい車両を導入すればいいというものではない。速度向上に伴う大きな問題の1つが騒音である。速度向上によって騒音レベルに影響が及ぶのであれば、地元に通知して理解を求めるのは極めて当然の話ではある。
しかし、この速度向上試験に使われたE7系には大きな変化があった。パンタグラフの左右にパンタグラフ遮音板という大きな側壁が設置されていたのだ。速度向上試験にはE2系1000番代も使用されたが、こちらの試験編成にもパンタグラフ遮音板が設置された。
パンタグラフ遮音板の役割は、文字どおりパンタグラフが発する騒音を遮断して沿線への騒音を低減させることだ。パンタグラフ関連の騒音はいろいろあり、走行風による風切り音や、架線との摩擦音、架線から離線する際に発生するスパーク音などが知られている。このうち、スパーク音についてはほぼ解消されている。また架線との摩擦音もさほど大きな問題となされておらず、いちばん重要視されるのは風切り音だといえる。
パンタグラフ遮音板が設置された理由
JR東日本では、パンタグラフの基台を流線型のカバーで覆い、基台を支持する碍子(がいし)を翼断面形状とした低騒音碍子を採用したパンタグラフをE2系1000番代やE7系に搭載。E2系1000番代はパンタグラフ遮音板を使用せずに、東北新幹線・宇都宮―盛岡間で最高速度時速275km運転を行っている。
E7系も北陸新幹線内では時速260km運転を行っているが、東北新幹線・宇都宮―盛岡間では時速275km運転をすることが可能な環境性能を持っている。そんなE2系1000番代とE7系にパンタグラフ遮音板を設置して上越新幹線での速度向上試験を実施しているのは、上越新幹線の地上設備が時速275km運転に対応していないためだ。
実は新幹線の騒音対策は車両だけで行っているわけではなく、高架橋の防音壁など地上設備側でも対策を講じることで成立している。つまり東北新幹線・宇都宮―盛岡間については地上設備でも十分な騒音対策を施しているため、E2系1000番代やE7系はパンタグラフ遮音板を使わずに時速275km運転を行うことが可能なわけだ。
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