不安をまったく感じないわけではなかった。しかし、「大学の内部で必ずしもフェアじゃない人事を知ったときのほうが断然大きかった」という。道理の通らない状況に身を置くより、不確かながらも世の中の摂理に即した環境にいるほうが心安らぐ。よくわからないものを自らの力でわかるようにして遊んでいた、子どもの頃からの性分、そして自信が根底にあると感じた。
おそらく多くの業界で生じている変化
現在、独立系研究者となって14年目に突入している。
その間に忙しさや収入の波もあったが、おおむね順調だと振り返る。複数のクライアントとの仕事を並行してこなしているので、1つや2つが途切れたり問題が生じたりしても致命傷にはならない。穴ができても、これまで培った人脈や会合の場でのつながりが新たな仕事を呼び込んでくるので、積極的に営業をかけることもない。
独立して3年目に結婚したが、仕事のスタイルは特に変わらず、マイペースに熱心に研究に打ち込める日々が続いている。冒頭に挙げたようなプロジェクトをいくつもこなし、2016年12月には一般向けとしては初の単著となる『いじめは生存戦略だった!? 進化生物学で読み解く生き物たちの不可解な行動の原理』も上梓した。
14年前と比べると、独立系研究者としての仕事はかなりやりやすくなっているという。
「とにかく説明が楽になりましたよね。今はフリーランスとして学術研究に携わることが、それなりに理解してもらえます。この10年でインターネットによる情報共有の技術が非常に発展して、昔だったら組織でないとやれなかったことが個人でもかなりの範囲で可能になっています。だから、おそらく多くの業界で生じている変化だと思いますよ。
また、私の専門分野である生き物のことやデータマイニングのことが、世の中で主流化しつつあるとも感じています」
舗装があったりなかったりした道をとにかく一直線に進んで、小松さんはなるべくして独立系研究者になった。そして、そのスタイルを変えず、定年も設けず、死ぬまで続けることを目標にしている。これから予想だにしないことも起きるだろうが、きっとこの一本道は直線のままだろうと思う。
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